8/4、日立と三菱重工という日本を代表する企業の経営統合が報じられた。実現にはまだ紆余曲折がありそうだが、すでに部分的に事業部門の統合が進んでいる。日本経済の行方を象徴している。
日立は1910年、日立市にあった銅鉱山向けの機械工場として発足した。この銅山は日産財閥の中核となった。
三菱重工は1884年、長崎造船局の払い下げを受けたことから始まった。三菱財閥の中核企業の一角を占めてきた。
いずれも明治以降の日本の工業化と、経済発展に大いに貢献した企業である。戦後、財閥が解体された後も日本を代表する企業として成長してきたのは周知である。現在、三菱グループは国内で依然として大きな勢力を有している。その点、日産グループの影は薄いが、それに代わって日立が大きな勢力を築いてきた。
このような日立と三菱重工の経営統合は何を意味するのか。金融部門では、三井と住友に象徴されるようにグループの垣根を越えた統合がいくつも実現している。日本の発展が限界を迎え、さらに海外との競争が激化する中で、従来のグループ金融が意味をなさなくなったからに他ならない。これに対し、グループの中核をなす事業会社の統合はなかったのではないか。石炭、砂糖などは確認していないが。
しかも、日立と三菱重工が属するのは、これまでの技術の蓄積が物を言い、これからも成長が期待できる機械分野である。それがグループを越えた経営統合を目指すのは、当然ながら、国内での需要の縮小を反映したものである。日立と三菱重工という国内企業の雄であっても(何て、差別的表現の最たるものだが)、生き残りを図らなければならない状況に直面している。
言い換えれば、明治以来の日本経済が大きな転換点を迎えたことを表している。日本が大きな1サイクルを終えたのだろう。この事実は今後の証券投資を考えるうえで、重要である。具体的に何をキーワードとして投資の意思決定をすべきなのか。これは個々人が考えるべきテーマだろうが。
2011/08/06