川北英隆のブログ

省電力は誰のためか

大震災から5ヵ月が経過した。たっぷり時間があったにもかかわらず、日本のエネルギー政策は確定せず、停滞したままである。他の政策も将来像が見えない。その中、省電力が独り歩きしている。
省電力は誰のための政策なのか。原発が地震で止まったから仕方ない面もある。きわめて危ない原発もある。一方、危険度の低いものもある。完全に安全ではないから、リスクの度合いに応じ、当面の対応、中期的な対応、長期的な方針が策定されるのが普通だろう。それなのに、単純な思いつきとしか思えない「天の声」にエネルギー政策が翻弄され、どの方向に行くのか、出口も見えない。これでは困るのである。
この無策の中で省電力だけが錦の御旗のごとく実行されている。でも、その膝元の東電は発電能力に十分な余裕があった。多少省電力をサボってもよかったのである。でも、省電力を一番喜んだのは実は東電ではないのか。というのも、発電能力に余裕はあったものの、目一杯発電するには効率の悪い、すなわち発電すれば赤字の出る発電所を動かす必要があった。だとすれば、目一杯発電するのは経営上よろしくない。ということで、東電とすれば省電力大歓迎だと思えてならない。
関電はぎりぎりまで発電能力を使わざるを得ない状態に追い込まれている。しかし、発電所の増設の動きが報じられていない。少なくともそんなニュースを読んだ覚えがない。いずれ原発が動くのであれば、発電能力の増強は無駄である。だから多少でも節電してもらい、当面をしのぎたい。そんな思惑が見え隠れしているようだ。政府のエネルギー政策が不透明な間、積極的に動けば損なのは当然の原理である。その原理を関電が実践しているにすぎない。
政府が明確な意思決定してくれないことには、今年の冬も、訳もわからず、うやむやのうちに省電力が謳い文句となり、それに従わない者は売国奴呼ばわりされかねない。本当の売国奴は別に居るにもかかわらず。情けないことだ。

2011/08/17


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