川北英隆のブログ

鉱工業生産指数8月

8月の鉱工業生産指数が先月末に公表された。その結果を簡単に分析しておきたい。新聞で報じられたように、前年同月と比べ+0.6%と、ようやく水面上に顔を出した。ただし2月の+2.9%にはまだ及ばない。
気になるのは、9月の生産の予想が8月対比で-2.5%となっており、これが実現すると再び水面下に沈むことである。10月の予想が+3.8%となっているが、9月の落ち込みを10月に取り戻したいという企業の願望かもしれない。
8月の状況をもう少し見ておくと、乗用車をはじめとする輸送用機械の回復が目立つ。3月、4月の生産が前年同月比で(以下、同じ)で半減していたのに対し、8月は+4.1%である。鉄鋼も、スピードは遅いものの、ようやく+0.4%にまで回復した。
一方、回復の遅れているものとして、電子部品・デバイスがあげられる。依然、-9.6%である。世界的にパソコンの生産が芳しくないことを反映しているのだろう。実は電子部品・デバイスのウェイトは乗用車とあまり変わらないから、影響度が大きい。
また、これまで堅調だった資本財の増加が頭打ちになっている。土木建設用機械、産業ロボット、金属工作機械などに勢いがなくなり、むしろ生産の減少も見られる。
日本経済は依然として海外頼みの状態にある。乗用車は大震災の影響で払底した海外在庫の積み増しで回復した。資本財は海外、とくに新興国での設備投資意欲に支えられていた。これらの要因から、国内の生産が回復してきたわけだが、今後は海外からの順風が途切れ、逆風になる可能性も否定できない。
9月の生産の予想がマイナスであるのは、早くもこの状態を反映している可能性が高い。国内の製造業にとって、正念場を迎えていることになる。

2011/10/01


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