有斐閣の経済辞典が改訂作業に入っている。現在の版(第4版)が出版されたのは2002年5月だったようだ。それから9年以上が経過した。その項目を検討していて、死語が多いのに気づいた。
経済辞典の項目数は約2万あるそうだ。担当しているのは、そのうちの証券関係の項目の一部、100項目少しである。すっかり忘れていたが、原稿のファイルを確認すると、第3版から担当し、第4版の改訂も行っていた。第4版の改訂作業当時は仕事が多忙だったため、ほとんど記憶にないのだろう。多分、綿密なチェックをできていなかったに違いない。
今回の改訂は時間が十分あるわけではないが、それでも1日たっぷりかけて作業した。証券関係の全リスト(1400項目くらい)を眺めてしょっぱなに気づいたのは、この9年間に用語の大幅入れ替えの必要性が生じていることだ。いろんなことが重なったからだろう。
第一に、前回の作業が十分でなかった可能性だ。これは反省しておこう。
第二に、日本で証券市場、とくに株式市場の自由化が進んだのは1999年10月以降であり、前回の辞典の改訂作業が始まったのはその直後だった。このため、株式市場の自由化があまり反映されていない。
第三に、金融市場の国際化が2000年以降、急速に進展した。日本はともあれ、世界が市場の拡大に酔った時期でもある。技術の革新、制度の改革も数多くあった。これらを今回、反映させなければならない。
で、どんな死語があるのか、少しだけ例示しておきたい。正確な意味を知っていたのなら、驚きだ。「玄人相場」、「餅つき相場」、「グラマー・ストック」、「才取会員」、「手振り」、「場電」、「地場」、「抱合せ増資」、「(株式の)額面」など。半世紀も市場と付き合っていると、項目リストを眺めながら、「そういう言葉もあったな」と懐かしい。
「もしも死語の意味を知りたいのなら辞典を買って」と書きたかったが、どうもネットの発達は辞典を不要にしている。上で挙げた例もたいていはネットでひっかかった。言葉の意味がほんとうに正しいかどうか、信頼性は低いが。
2011/10/31