すでに報じられているように、10月の輸出は悪かった。アメリカ、ヨーロッパ、アジアが共に前年同月の水準を下回った。とくに、ヨーロッパとアジアの低下が目立っている。
輸出金額で見ると、ヨーロッパは6月以降、前年同月比でみて(以下、同じ)プラス6%程度で推移していた。それが10月にはマイナス2.9%である。ギリシャ問題に端を発したヨーロッパの財政危機が景気の悪化をもたらし、貿易にまで影響してきたことが背景であることは、ほぼ間違いない。また、中国の数値がまだ公表されていないため、アジアの落ち込みについて確たることは言えないが、タイの洪水の影響だけではないだろう。
輸出量で見てもほぼ同じ傾向だが、アメリカ向け、アジア向けは10月以前から芳しくない。これに対してヨーロッパは10月に目立って悪化した。
他方、輸入の増加が続いている。前年の10月は、輸入の活発度が鈍った月だったため、余計に輸入の増加が目立つのかもしれないが。
品目(金額)では、輸出の場合、一般機械、電気機器の減少が目立つ。電気機器では半導体等電子部品の減少幅が20%を超えてしまった。輸送用機器もわずかながらマイナスである。輸入の場合、鉄鉱石をはじめとする原料品はほぼゼロベースにまで増加率が縮小しているが、他の品目の増加に大きな変化は見られない。原料品の輸入には景気の影響があるだろう。
以上の結果、輸出と輸入の差額はマイナス(赤字)である。季節性を調整した数値では4月以降、マイナスが続いている。とくに10月のマイナス額は今年の4、5月とほぼ同じ金額にまで戻ってしまった。
以上、世界経済が悪化の方向に向かっていることと、貿易収支に見られる赤字傾向に注目しておきたい。
2011/11/22