今日の日経夕刊の文化欄に葛飾北斎の「富嶽三十六景 凱風快晴」が解説してあった。その解説が腑に落ちない。
凱風快晴は有名な赤富士の浮世絵なので、ネットで調べればすぐに出て来ると思う。富士山の頂上部が茶色、中腹が赤、下が緑である。
何故頂上部が中腹より暗い色をしているのか、「頂はまだ夜の闇を残しているということなのかもしれない」との解説があるが、実際には頂きから夜が明ける。地球が丸いから、高い所から日が差し始める。ということで正しい解説ではない。
また、この解説には比較のため野呂介石「富嶽紅暾図」というのが載っている。こちらの富士山は山頂が赤く、中腹が白い。雪山が朝日に輝き始めた姿である。いわゆるモルゲンローテである。こちらの絵の方が写実的だ。
それに対して凱風快晴の方は、山頂が上空の雲で陰っている姿なのかもしれない。とはいえ、「快晴」とあるから、山頂全体が陰るのも変だが。そんな議論から離れ、一枚の絵として見ると、葛飾北斎の方が色のバランスとして野呂介石よりもはるかに優れている。写実を離れてしまっていると考えるのが良さそうだ。現実はどうのこうのと講釈すると墓穴を掘りかねない。
2011/11/10