川北英隆のブログ

欧州危機の結末は不明

一昨年末から昨年の年初にかけて表面化したギリシャ問題は馬小屋のボヤ程度と思われたが、今、ドイツという母屋にも飛び火しそうだ。市場は格付機関のコメントに一喜一憂しているが、本質的でない。
ドイツの誤算の原因を探ると、東ドイツ統合の成功体験にも行き着くだろう。当初、ドイツの統合について、膨大なコストが必要だから、西ドイツ経済を揺るがしかねないとされていた。フタを開けると、むしろドイツの国力が増大した。冷戦の集結というタイミング(そもそもこれが東西ドイツの統合という悲願を実現したのだが)も好影響をもたらしたし、IT革命によるアメリカ経済の発展も支えとなった。しかし何よりも重要なのは、西と東に分断されていたとはいえ、元々はほぼ同じ気質の国民だったという点だろう。詳しくは知らないものの、西日本と東日本程度の差ではないのか。
その成功体験がユーロという統一通貨に発展したわけだが、何回も書くように、統一に向かった相手は基質も違い、かつ文化的にしたたかな南欧である。旅行するだけですぐに気づくが、交通マナーが完全に異なる。大阪と東京の差どころではない。南欧は人間として面白いのだが、こすい側面もある。傾いた文化国にありがちなことだ。文化的に擦れているというか、成熟しすぎているのだろう。
たとえれば、プライドは高いが貧乏だから騙しだまし生活していた国に、ユーロという姿でポルシェがやって来たわけだ。「カモがネギ」かもしれない。それも「経済発展という未来」に目が眩んだ投資家の運転によって、そのポルシェが大量に流れ込んできた。でも地道にポルシェは似合わなかった。今、大量のゼニ=ポルシェは、高速道路の国に帰ろうとしている。でも、帰ったところで、地道に傷んだポルシェは修理工場行きかもしれないと、投資家は恐れている。
結局のところ「こすい奴には切除を含めた罰則を」、「統一で利益を受ける者には相応の負担を」の組み合わせしかないだろう。ギリシャを切除するのか、切除した時の負担をドイツが徹底的に請け負うと約束するのかだ。そうでなければ、ドイツ自身がユーロから離脱することもありえる。どちらの決断が行われるのかだが、これまでの経過からすると、火の手がドイツに本格的に迫らないことには当事者自身にも不明だろう。
気がつくと、このブログを書く時にかけている音楽は、(蛇足ながら生存中はドイツ語圏に属したリストの)「エステ荘の噴水」になっていた。

2011/11/26


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