昨日、11月の貿易統計が公表された。その内容はといえば、輸出の減少と輸入の増加によって輸出入の差額はマイナスだった。とはいえ、日経新聞の見出し「貿易赤字、2ヵ月連続」は少しミスリードだろう。
というも、11月は季節的に輸出があまり多くない。この影響を考えておく必要がある。輸出が傾向として減少していることを否定しはしないが。つまり、季節性を考慮して傾向を見出しにする必要がある。
実際、同時に公表された11月の季節調整済の輸出量指数は前月に比べてわずかだが上昇している。季節調整済の10月が大幅に減りすぎたこともある。もっとも、季節調整とは統計的な処理のことに他ならず、絶対的な信頼を置くに値しない(この点はリーマンショックの影響に関連して、2009年頃のこのブログで何回も述べた)。一方、発電用の天然ガスを初めとする燃料の輸入が依然として高水準である。
この結果、輸出と輸入の差額は、今年5月に次ぐマイナス(赤字)である。また、季節調整後の赤字額としては大震災後の最高額となった。最近では、リーマンショック後の2009年1月の赤字に次いでいる。
ということで、原子力発電が止まっていることから貿易収支は赤字幅を拡大している。「タイの洪水」という言い訳もあるだろうが、季節調整後の輸出入差額は4月以降赤字続きである。「貿易赤字、2ヵ月連続」との見出しは、この2ヵ月で急速に輸出入の差額が拡大した印象を与えるが、本当のところ、赤字は大震災以降続いていることでしかない。
2011/12/22