川北英隆のブログ

国の信用格付けとは何か2

フランスの格付けがトリプルAから滑り落ちたといっても、わずか1ノッチ(1段階)である。十二分に信頼に足る貸付先との評価である。開き直れば、「1ノッチがどうした、日本を見ろ」だろう。
S&Pによる日本の格付けはAAマイナス、フランスの新しい格付けがAAプラスだから、それより2ノッチ下である。フランスが信頼に足りない貸付先だとするのなら、日本はどうなるのか。この事実だけをもって、どこかの大臣のように「消費税を引き上げ、財政の健全化を図るべきだ」とは言わない。しかし、ユーロの格下げに大騒ぎする前に、よく考えないといけない事実であることは確かだ。
それでまた不思議なのが、日本の国債市場が静かなことである。むしろ、「フランスをはじめ、ユーロから逃避した資金が日本国債に流れ込む可能性がある」との観測だろう。「世の中どうなっているんや」と思うと同時に、「リスクを取って躓くと大目玉を食らうから、消去法的に日本国債しかないのだろう」と同情し、「本当にサラリーマン投資家は可哀想や」と、以前のわが身を振り返って涙したりもする。
日本国債を保有しているのは金融機関や大口の投資家である。これらの投資家は、もはや自縄自縛、国債を買い続ける以外に国債急落(あえて急落と書いておく)リスクをヘッジする手段を有していない。「保有している国債を売却してポジションを軽くする」なんてことは夢のまた夢、「今後は新発国債を買わない」と決めるだけで国債価格が大幅に下落し、同業の間で疑心暗鬼が渦巻き、国債急落の引き金になりかねない。
だから、フランスの格付けにも「平然」を装い、「日本国債に逃避」と叫ぶしかないのかもしれない。

2012/01/15


トップへ戻る