ユーロ諸国に対するS&Pの格付けが一斉に引き下げられた。なかでも、フランスがトリプルAから1ノッチ引き下げら、報道は大騒ぎに近い。ユーロの危機を象徴しているという。本当なのか。
最近、2つの原稿を書き、その中で国の格付けとは何なのかを問うてみた。ポイントは次の3つである。
第一に、格付機関も一般の投資家も、利用できる情報に差がないという事実である。この点を、公開情報以上の情報をベースに格付けが付与される社債や証券化商品との大きな差異として、投資家は再確認しておかないといけない。つまり、国に対する格付けは、特別扱いすべきものでない。
第二に、とはいえ投資家(その内部に設置された牽制組織)や規制当局が、格付けに特別な意味を付与することが多い。格付機関という第三者が客観的にリスクを評価するからである。投資家(そのフロント)自身が投資対象を評価して「安全だ」と宣言することと、格付機関が「安全だ」と位置づけることには信頼度に差がある。
第三に、「格付機関の信頼度」がどこまで本物なのか、常に疑っておく必要がある。格付機関の存在意義を否定するわけではないが、かといって崇めてはいけない。とくに国の格付けに関して格付機関が特別な情報を有しているわけではないのだから、投資家の評価と格付機関の評価はほぼ同時に変化する。「同時に変化する」ことを忘れ、格付けを絶対視して崇めてしまうと、格付けが自己実現的に作用しかねない。1997年のアジア通貨危機当時、韓国に典型的なように、アジア各国の格付けが極端に低下したことを思い起こすのがいいだろう。
2012/01/15