川北英隆のブログ

AIJ事件の本質とは

年金基金から投資業務を委託されていたAIJ投資顧問がいい加減なというよりも、詐欺的な資産運用を行い、多くの中小の企業年金財政に多大な打撃を与えたらしい。実態の解明はこれからだ。
同業の間では怪しげな投資顧問会社として名前が知られていたようである。直接関係がないのであまり気にもしていなかったが、数年前に名前を聞いたように思う。ウォール・ストリート・ジャーナル(http://jp.wsj.com/Japan/node_398677)によると、2009年、格付投資情報センター(R&I)がAIJ投資顧問に疑問符をつけていたというから、聞いたのはその前後のうわさ話だったかもしれない。
また、ミラーマンが2006年までAIJの顧問をしていたと、本人が書いている(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-30de.html)。で、どうしたとは何も言わないが。
そもそも、新聞で書かれているようなデリバティブの売買でコンスタントに高い投資成果を得られるなんて投資の天才でもないとありえない。そんな天才なら、投資顧問業でこつこつ手数料を稼ぐような地味な商売をやるわけがない。
年金基金がそんな手口にころっとやられるなんて、やられる方もどうかしていると思う。そんな投資顧問会社には門前払いが筋だろう。門前払いができなかったとしても、多額の資金の運用を委託する前に、「何故そんな好成績が生まれるのか」を徹底的に調べる必要があった。あるアセットマネジメント業を行なっている機関からメールが届き、意訳すると「年金基金側が素人すぎる」と書かれていた。まさにそのとおりである。年金基金や地方の金融機関もそうだが、法的にプロとして擬制されている機関の本質が素人すぎて、あくどい業者にころっとダマされることが日常化している。あくどい業者が常に法律違反しているわけではないが、間違えば今回のような詐欺的事件に発展しかねない。
行政に望みたいことは、この事件をきっかけに規制を細かくして外見を整備することではなく、資産運用業務の受け手と出し手の質を高めることである。資産運用は本来自由であるべきだから、外見をがちがちに規定すればするだけ質が劣化する。質を高めるにはどういう組織と人材とモラルが求められるのか、大枠を設計し、その設計を具体化するように努力しなければならない。

2012/02/27


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