川北英隆のブログ

債券市場の変化

原稿を書くため、日本の債券市場を久しぶりに分析してみた。大きな変化が生じているような兆しがあった。海外投資家の影響力が増しているようだ。
海外投資家の保有比率が上昇していることは日経新聞で報道されている。確認しておくと、2011年12月末現在、海外投資家は国庫短期証券を27.5兆円、国債を50.9兆円保有している。それぞれの発行残高に対して16.8%、6.7%である。この1年前、2010年12月末の保有は、国庫短期証券21.1兆円(発行残高の14.1%)、国債35.1兆円(同4.8%)だったから、海外投資家が国債の保有比率を相当高めたことが判明する。
年末で見て、この保有比率は国庫短期証券では過去最高、国債では2008年に次ぎ、金額では国債も過去最高になる(四半期で見ると2008年9月末に53.9兆円保有していたが)。
では、売買行動はどうなのか。
債券全般(国庫短期証券などを除く)の、大半は国債だが、その買い越し額(買いマイナス売り)の推移を見てみると、今年に入ってからの海外投資家は生損保に次ぐ最大規模の投資家になっている。地方銀行、信託銀行、農林系もほぼ同じ規模だから、圧倒的ではないものの、海外投資家の存在感が増している。年が明けても買い越しの状態が続いているから、現在、昨年末の50.9兆円よりも、さらに保有金額は増えているだろう。
売りと買いの合計金額は都市銀行に次いでおり、信託銀行とほぼ同じであり、その他の投資家を引き離している。保有額に比べ、積極的な売買スタンスが目立つ。
残念ながら、海外投資家が保有する国債の残存年数は不明である。国庫短期証券の保有額が多いことからすると、比較的短めの国債を保有し、こまめに売買することで利ざやを稼いでいるのかも知れない。もしくは、都市銀行と同様、短期のものだけではなく、全年限の国債を視野に入れて売買益を狙っているのかもしれない。もっとも、海外投資家の積極的な売買は過去から見られる。金利変動の大きな波を捉えようとしているのかもしれない。
あれこれ書いたものの、海外投資家の動向がどこに向かっているのかは明白でない。とはいえ、国債の保有残高が増加したことは確かであり、その売買額の多さからすると、今後の債券相場に大きな影響を与える可能性がある。

2012/05/05


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