川北英隆のブログ

ちぐはぐな教育体制

満を持してというほどではないが、教育問題に関してコメントしておきたい。要するに、教育に関する議論と行動が日本ではちぐはぐである。何も考えず、場当たり的に対応しているのだろうか。
1つは企業と学生の関係である。
企業は大学教育の充実に期待しているという。とりわけ、国際的な教育、革新的な発想の育成、そんなものを大学に対して強く求めている。その一方で、企業は新卒の就職を4月卒業にほぼ限定し、かつ、3年生の夏休みから実質的に受付けを開始するのが実態だ。そんな企業の採用活動に対応するため、学生は1年間程度を棒に振る。その間、教育も何もあったものではない。
何回も書いたように、学生に「就活のため授業を欠席したい」と言われれば、教員としては「しゃあないなあ」としか言いようがない。こんな全体の採用活動の流れを黙認、放置し、さらに自らもこの状態を加速させるように行動しておいて、片方で「大学に教育活動をしっかりしてほしい」なんて要望する企業は、駄々っ子そのものだろう。経済学的に表現すると、新卒の採用で自分自身は合理的に活動しているつもりが、それはローカルな最適行動でしかなく、マクロ的には大きな社会問題というか損失を生み出している。
何とかならないものか。大学が、そんな我儘な企業に内定した学生から単位を没収し、卒業させないという非常手段を発令するしかないのか。
もう1つは大学の予算である。
実は、大震災からの復興予算対策として、大学の予算(国からの大学に対する運営費交付金)が削減される。国家公務員の給与が平均7.8%、2年間削減されることとなった。それに合わせて独立行政法人である国立大学にも、同等の措置が要請され、その措置を確実にするために予算を削ろうとしているわけだ。しかも、この予算削減は国家公務員の給与と異なり、実のところ、2年間さえ経てば元に戻るとの保証もない。
大学教員の給与は高くない。かつて「気楽な商売」と言えばそうだったかもしれないが、今ではいろいろと煩雑な業務のある職業になりつつある。これから教員になろうとする若い世代にとって、このままでは、「大学教員にでも」、「大学教員しか」の職業となるだろう。国の姿勢が依然として「教育の重視」を向いていたとしても、予算がないからとの理由で実質的に教育を軽視し、結局は貧すれば鈍することとなり果てたのだろうか。
いずれにせよ、定年まで5年を切った者、僕としては、給与削減は大きな問題ではない。政策音痴なのか、それともない袖は振れないのか、それはともかく、こんな事態に陥った国を憂うのみである。

2012/05/29


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