今日の日経夕刊の一面に、デフレ脱却に向けた閣僚会議が、「病院・商業施設に耐震表示」を義務化するとあった。耐震補強を急がせ、需要を生み出そうという窮余の一策らしい。でも、えらく変だ。
問題点はいくつかある。そもそも論を言えば、どの程度の地震を想定し、耐震化するのかについて、基本方針があるのだろうか。1000年に1度の地震なら、それこそ日本の建物は要塞化する。そのような政策が施工されれば、企業は日本脱出するだろう。その脱出を禁止するつもりなのだろうか。
何をどこまで想定し、耐震基準を制定するのかについて、一貫した方針はない。一番重要かつ緊急を要する原子力施設についても、その政策をどうするのかは決まっていない。その場凌ぎで原発の再稼働を認めたというか、認めさせたのが実情だろう。原発に反対するわけではないが、半ば脅しで再稼働するのは、政府の責任放棄でしかない。
それと同様、病院・商業施設に耐震表示を義務化し、工事を促すのも脅し作戦でしかない。現在の耐震基準でという前提だろうが、その後、「やっぱりもっと大きな地震が起きるかもしれないので、耐震基準をより厳格化する」ということになりはしないのか。デフレ対策というくらいだから、それが落ちのように思えてならない。
もう1つの問題点は、そもそも国や地方の建造物自身、耐震補強をどの程度達成しているのかだ。実態は不明だが、大学の建物の耐震補強でさえ、100%達成されているわけではないことを述べておきたい。大学は耐震補強の予算申請を行っているのだが、認められないものが多く、繰り返しての申請で徐々に進んでいるのが実態である。
大学の建物の玄関に、「ここは耐震基準を満たしてません」と掲示するのだろうか。それとも、来年度予算で一気に耐震補強されるのか。後者であれば、工事用の車の往来によって、大学構内で交通事故が発生しそうな。
不思議な国、平和な国、政治家の思いつきの国の、変な政策案だ。
2012/07/10