最近つくづく思うのは、何故あれほどまで最先端だった日本の家電(ソニー、パナソニック、シャープ)がダメになったかということだ。その理由をメモ書きしておきたい。
第一に、家電は部品点数が少なく、デジタル化に弱かったことだろう。家電はパソコンと同様、部品さえ手に入れは簡単に組み立てられる。子供の時、ラジオを組み立てようなんて考えなかった者にとって実感はできないのだが、ある程度イメージはできる。こんなことは専門家には分かっていたはずだから、それへの対応を何故できなかったのかと思う。
第二に、国内市場に固執したことだろう。しかし、人口が頭打ちから減少に転じた国内において、需要が伸びるはずもない。ということで、家電メーカーはブランドに注力した。美しいと消費者に思わせたテレビを売れば利益率は高い。たとえば、前にも書いたようにソニーのロゴへのこだわりには笑ってしまう。もう1つの例は、シャープのテレビが象徴だと思う。しかしながら、他のテレビと比べて(そもそも自宅で他のブランドと比べられないし)、何が美しいのか理解が難しい。一時は口コミで値引き率は抑制できたが、それはあくまでも一時的だ。大型化も試みたが、狭い日本では限界がある。むしろ、国内市場よりも海外市場に注力し、大量に生産すべきだったのではと思う。
第三に、ブランドという虚構に注力したあまり、肝心の製品の機能に問題が生じてしまった。ここ10年くらい買った日本の家電には碌なものがない。いきなり壊れていたり(3社以外の製品だが)、説明書が記載不備であったり(これも3社以外の製品)、1年以内に壊れたりする。余計な機能が付いているものの、利用方法が煩雑だったりもする。日本製品の信頼性が地に落ちたようだ。製品の信頼性が日本の家電の最大のブランド力であったはずなのに、そこを経営者は軽視したのではないか。生産コストを低くするため、信頼性を犠牲にしたのではないかと思ってしまう。
第四に、経営者のセンスが悪い。社会との対話ができていない。パナソニックは何年か前から、投資家に対する情報提供に消極的になったとの評価を受けている。株価の下落も、この情報開示の悪さと無関係ではないだろう。シャープは、つい先日、工場等の資産を銀行の担保に差し入れたのに、ホームページにはその記載がない。社債投資家にとって銀行に対する担保提供が切実な問題だと理解していないのかもしれない。念のために書いておくと、この担保提供によって、シャープが潰れた場合、社債権者に元本が返済される可能性は著しく低下してしまった。
シャープは実家の近くに大きな工場があったので、非常に身近である。パナソニックは、戦後間もなく、その株式で父親は儲けた。常に身近な企業であり、尊敬の対象だっただけに、今後は経営精神を入れ替え、再生してもらいたいものだと願っている。
2012/09/13