川北英隆のブログ

領土問題が招く信用の失墜

8/15のブログの続きである。領土問題は権力者や民族の内面を如実に表現する。長年ほったらかしだった島を巡り、日中、日韓が争うのは、第三者的立場から眺めれば滑稽か気持ち悪い。
これまで「ほったらかしておいても実害のほとんどなかった島」も、現在は海洋資源の開発権から大きな意味を持ってきている。この点は理解しないといけない。しかし、ほったらかしだったから、本当にどちらの国のものなのか、判然としないのである。これは、「沖縄が中国の固有の領土だ」との一部の主張を一笑に付し、もしも本気で中国が領有を試みれば国際的に堂々と防衛力を行使できることとは少し異なっている。つまり、両者にそれなりの言い分があり(言いがかりだ、屁理屈だとして、当事者は聞く耳を持たないのだろうが)、どこかで妥協するしかないだろう。大局的には仲良くするのが得策である。
現在はどうなのか。日中の問題に焦点を当てると、日本政府はいつもながらの無能さを世界に露呈してしまっている。尖閣諸島を国が買い取ることにより、それが実質的に意味を持たず、20億円をドブに捨てるようなものだと誰しもが理解していても、中国が大反発することは目に見えていた。それに対して政府は事前に、どのような対策を講じてきたのか。また、買取り案自身、東京都の右傾化した知事のアイデアを横取りしたものだった。民主党の人気取り政策の一環としか思えない。現実には、それが大騒動をもたらしているし、憶測するに、任命直後の中国大使を心労で倒してしまった。
一方の中国は国際的な信用を失墜させているとしか思えない。たとえ中国の憤りを理解したとしても、その憤りを集団暴力として発散させ、民間の工場や商店を壊すのは法治社会ではないと、先進国の誰しもが感じるだろう。中国に経済進出することの世界的なリスク評価を増幅させたに違いない。このリスクは、中国経済の発展にとっての大きなネックとなる。さらにこのリスクへの意識は、チベット問題をはじめとする中国政府のこれまでの姿勢を再認識させるものだ。「たかが沖の小島のために、中国は大損した」と思ってしまう。
結論は、尖閣諸島の問題は、日本にも中国にも損失だけをもたらしている。竹島問題も同様である。仲良くする方法を早く見つけないと。

2012/09/16


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