昨日の日経新聞の記事に対するコメントである。黒田アジア開銀総裁へのインタビュー記事には、黒田氏が日銀による強力な金融緩和を求めたとある。金融緩和はともかく、その手段が少し変だ。
黒田氏とは何回か会ったことがあるので、あまり批判したくないのだが、まあお許しをというところ。それで思い出したが、日銀の白川氏は何年か大学の教員として同じ敷地でダブっていることもあり、会っている。これらのことを考えると、中立的な(黒田氏にも白川氏にも偏らない)意見を言えるかもしれない。
僕自身は追加的な金融緩和には批判的である。これ以上緩和して何になるのかと思っている。むしろ、生き残ってはいけない企業がさらに何年か生き延びるだけで、将来に大いなる禍根を残しそうである。
それで、黒田氏の指摘する緩和手段だが、記者が正しく書いたのかどうかは不明ながら(これまでの経験からすると日経の記者はちゃんと書くが)、「資産担保証券、インデックス債、株式もある」と書いてある。とはいえ、資産担保証券はすでに日銀の購入対象になっていたように思うし(確認していないので「間違っていたら堪忍や」だが)、いずれにしても発行量が少なく、徹底的に購入したところで大したことがない。インデックス債とは物価連動国債のことなのか、株価連動債なのか不明だが、前者は資産担保証券と同じで発行量が少ない。後者は次の株式購入と同様の問題をかかえている。
株式は、ETFやREITの購入を日銀はすでに実施している。REITは不動産類似の資産だから、黒田氏の念頭にあるのはETFか個別株式かのどちらかだろうと思う。
このうち、個別株式は、日銀に企業を選択するアナリスト的能力があるとは到底思えないので難しい。外部に企業選択を委託するとしても、その外部がいい加減な企業選別をする可能性を排除できない。ETFの場合、株式市場全体をまんべんなく買うことに近いのだが、現時点において日本企業をまんべんなく買うことは正しくないと考えられる。というのも、市場から退出すべき企業(ダメ企業)が多過ぎ、ETFを買うとそんなダメ企業もついでに買うことになるからだ。ダメ企業を買えば日銀の資産が即時に毀損しかねない。
ということで、黒田氏が言う「緩和手段は山のように」のフレーズは大いに疑問と思える。ひょっとすれば記者の理解不足ではなかったのかと、再度記事の本意を問うている次第である。
2012/10/11