もう少しすると、日本海側は冬型の天気に見舞われる。そこで、湖南アルプスに引き続き、大江山を歩きに行った。大江山は福知山の北にあり、山から日本海が見える。当然、冬は雪が多い。
どう行くのかといえば、福知山から「北近畿タンゴ鉄道」に乗る。かつての国鉄の宮津(?)線で、現在は三セクの運営だ。大江駅で降りると、そこから町営のバスが出ている。タクシーなら5000円くらいかかるだろうか、その距離を僕1人で乗り、200円払った。しかも弁当箱のようなプラスティックのただの箱のなかに代金を入れる。運転手がちょろまかそうとするとすぐである。彼の名誉のために言っておくと、この辺りの住民は礼儀正しい。見知らぬ僕にもすぐに挨拶してくれる。町としても、ちょろまかされることは完全に想定外なのだろう。
大江山の話に戻ると、鬼が住んでいた伝説があるにしては非常になだらかな山だ。地図を見ても(僕が山に持参したのは国土地理院の5万分の1の地形図で、図面の名前は「大江山」)、大江山付近だけ等高線の間が疎である。標高はこの付近の山としては高く、大江山の主峰、千丈ヶ嶽は800メートルを超えている。
どうして酒?童子のような鬼の伝説が生まれたのだろうか。そう思っていたところ、鬼の岩屋というのがあり、山腹に大きな空洞ができている。山頂付近の岩は緑色の目立つ蛇紋岩だった。なだらかでいて高い地形といい、いろんな面で周りの山とは少し異なっている。目立つ山なことは確かだ。
そんな鬼の話はともかく、山頂付近にはブナ、トチ、カエデなどの広葉樹の林が広がり、稜線は潅木帯となっている。歩いていて気持ちのいい山だった。ただし舗装道路が山頂手前まで付けられている。それにもかかわらず、大阪から遠いために登山者は少ない。「行きたい」という声があるかもしれないので書いておくと、初春がベストシーズンではないかと思えた。
家に帰ると顔や首筋が赤かった。秋になり、日差しが弱くなったので油断したのが敗因。鬼退治どころか、日焼けで自分が鬼のようになったという顛末である。
2012/10/15