正規のサラリーマンは厚生年金に強制的に加入させられている。毎月、公的年金の掛け金として保険料が天引きされ、積み立てられ、運用される。関心を持つべきは、その運用が適切かどうかだ。
積立金の運用を担っているのが年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)である。また、運用状況はGPIFのホームページに示されている。詳しくはそのホームページを見てもらうとして、運用の概略を書いておくと、今年6月末現在、運用資産は108兆円、そのうち日本国債(それと同等のものを含む)が6割を超している。残りは内外の株式や外国債券である。
ここで質問だが、公的積立金についてGPIFが6割を日本国債に投資していることは何を意味しているのか。一言で答えれば、サラリーマンが強制的に国債を買わされているに等しい。ということは、国債の価値が大きく下がれば、将来の年金が約束どおり支払われるのかどうかを心配しなければならない。
つまり、公的年金は日本国の信用に委ねられていることになる。もちろん、年金の制度全体がそもそも国の信用に依存しているし、税金も投入されるから、「どっちでも一緒やん」という意見もあろう。しかし、考えて欲しいのは、国債に投資するということは、国民が支払った保険料の積立金が国の借用証書である国債に姿を変えることであり、国の信用に依存する割合を増やしたことに他ならないという事実である。
もしも、年金積立金が日本国債に投資されていないとすれば、国債の価格が大きく下がったとしても、積立金の価値に影響しない。また、それが海外債券で運用されていたのなら、日本国債価格の低下に伴って円安が急速に進んだとしても影響を受けないし、かえって利益が生まれる。
逆に円高になれば損失だが、円高の時には国民全体にとってメリットが(たとえば輸入品価格の低下が)生じているはずだから、年金生活に大きなダメージはない。反対に国債価格の下落とそれに伴う円安は、物価の上昇も引き起こす。年金がダメージを受け、さらに物価が上がれば、年金生活は非常に不安定となる。
まとめれば、年金積立金を国債で運用することはリスクの集中である。国債での運用を避ければリスクの分散になる。どちらを選択するのかは、日本国がどこまで信頼するに足りるかに左右される。現在の政治を見るにつけ、全面的に信頼していいのかどうか。分散投資したところで日本国を捨てるわけではなく、財産の一部を国債以外に回すだけである。こう考えると、個人的には分散投資が望ましいのではないかと思っている。
2012/11/05