今日の日経新聞の最終面、リービ英雄「莫言の消息」は良かった。最後の表現「(中国)大陸のおおらかさ」という普通に口にしそうな言葉に、中国の変わらぬ姿が非常にうまく表現されていた。
現在の中国の共産党の体制とは何なのだろうか。中国の綿々と続いてきたいくつもの王朝体制との違いは何なのか。これからもまだまだ中国を訪れ、その文化的伝統を味わいたい僕にとって、深入りする筋合いのものではない。
とはいえ代表的には、清王朝と元王朝の差異には注目すべきだ。元は日本を攻めた。清は日本に攻められた。他方、チベットと中国、たとえばチベットと元や清との関係はどうなのか。歴史は歴史として、客観的に評価しないといけない。
それはともあれ、「おおらかさ」という表現は中国を象徴している。すべてを飲み込んできたのだ。
戦争で数年間中国に派遣されていた父親は、「日本は狭い、(中国のような)大陸を意識しないといけない」と子供に言い聞かせていた。中国に足を踏み入れると、確かに大きかった。もちろんアメリカも大きいのだが、人口密度が違っている。アメリカは平原が多いものの、中国には同じ程度の面積に非常にたくさんの人間が住んでいる。しかも日本人に似ている。というか、日本が「漢字」を代表として中国から多くを学んだ。漢字だけではなく、他にいろんな文化がある。この厳然たる歴史を念頭に置かないといけない。
日本にとって中国は尊敬できる地域だと思う。しかも中国は、元や清に代表されるように、他民族も悠然と(詳しくは知らないが、表面的には悠然と)受け入れてきた。むしろそれらの民族を肥やしにして発展してきたと思う。受容性の高いのが漢民族なのだろう。民族全体として現実的に行動するのだと思う。そうでなければ、ここまで反映することもなかったのではないか。
もちろん、漢民族といえども、繁栄した一派は自分たちの地位を守ろうとし、衰退していく。日本でも同じことだ。ということで、民族内部での栄枯盛衰は当然生じうる。それを乗り越え、全体として発展していくのが民族の知恵というものだ。以上、今日の日経新聞の最終面に対する感想である。
2012/11/11