川北英隆のブログ

デフレは金融政策で治るか

衆議院が解散され、12月の選挙に向けて奇策、珍策がかまびすしい。とりわけ日銀をめぐる論議が盛んである。現在のデフレは日銀のせいだ、日銀の首に縄を付けて引っ張れだとか。正気なのだろうか。
このブログで何回も書いたように思うし、いろんなコラムでも書いてきたが、金融はあくまでも経済活動の裏方である。現在は、ゼニのやり取りだけを目的として取引されることが多いが、それが本質的な取引だとは考えられない。ゼニのやり取り以外の経済活動が、ゼニの動きにつられて動かないことには、何も変わらない。この議論は、実はもっと奥深いのだが、長居は止めておこう。結論だけを示せば、時間さえかければゼニが負けてしまうし、今までずっと負けてきた。
何が日本にデフレをもたらしているのか。直接的には、企業が適切に行動しなかったためである。企業は高度成長期に政府を頼み、大局的には政府の判断で動いてきた。その習性が今も抜けていない。自ら判断し、適切に行動できる大企業がほとんどない。経営者が経営者としての実践的教育を受けていないとも言える。ここでの教育とは、大学院、現場のことである。
高度成長が終わり、政府の神通力(といっても欧米のものまね)が通じなくなり、しかも政府の財政が危機的となっている。とすれば、頼みはゼニの総本山、日銀しかないというわけだ。
政治家も経営者と同類である。国の予算が使えないとすれば、打ち出の小槌は日銀しかない。しかも、政治家の立場として、法律さえ変えれば日銀を下っ端としてこき使える。今の「日銀の独立」は許しがたいのである。
続きは次回に書くとして、戦時中の状況を学べば明瞭なように、政治家が主導する政府はゼニを使うことに積極的になるが、ゼニを締めることには消極的である。政治家自身の身分を安泰にするための、行動の基本原理である。つまり、放っておくと、ゼニのバラマキが続き、国がハイパーインフレによる崩壊へと導かれる。この政治家の無秩序の盾となるのが中央銀行である。盾が盾として機能するには、中央銀行が政治家から、つまり政府から独立していなければならない。
ということで、日銀の独立を弱めるような法改正は、あってはならない。日銀の政策が「良くない」のなら、政府として日銀と対等に議論するしかないのであり、脅しは「よし子さん」である。

2012/11/25


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