赤木屋証券の廃業をネットのニュースで知った。検索すると各社が報じている。たかが中小証券会社に、何故そんな話題性があるのか。多分、東京は日本橋の一等地に店を構えているからだ。
中央通りと永代通りの交差点の角にある小さな、しかし目立つビルだ。昔の東急百貨店、今のコレドの向かいである。創業は1922年、廃業は今年つまり2012年12月25日予定とか。90周年を期に廃業するわけだ。
赤木屋証券の前を通ることが多い。今年に入って、「証券」の看板が目につかなくなった(ようく探したわけではないが)。その代わりに1階にある「赤木屋珈琲」の看板が大きくなったように感じた。それで、廃業したのかなと思っていた。日経新聞によると、今年9月に実質的に業務を止めたとのこと。赤木屋珈琲は続けるとも書いてあるし、不動産賃貸を本業にするとも。
小さな証券会社は、取引所内(場立ち)の情報を売り物に商売をしてきた。昔、取引所では人手を介して株式売買注文をこなしてきた。だから、場内ではあることないこと、いろんな情報が流れ、また売買の活況度も手に取るように分かったはずだ。その情報に基づいて売買すれば儲かる確率が高かった。つまり、場内に入れる権利に値打ちがあったし、中小の証券会社はその情報で自己売買を行ってきた。法人や個人の重要顧客にもその情報を伝達した。
時代は変わり、場立ちがなくなってコンピュータ化された。取引の情報(注文状況を示す板情報)も一部は一般投資家に開放された。中小の証券会社の情報の優位性が乏しくなったのである。手数料も自由化され、個人はネットでの取引に流れてしまった。さらに、株式市場の低迷が続いたことも痛手だったのだろう、中小の廃業を促した。廃業が続けば仲間内同士での情報の交換量と質が低下する。さらに、取引所のコンピュータが高速化し、中小の入り込む隙間がなくなった。インサイダー取引規制も強化され、いわゆる「早耳情報」は、それを使うことはもちろん、伝えることも禁じ手となる。
かつて、東証の周辺には中小の証券会社が多かった。それらが次々に消えている。時代の流れとはいえ、日本の株式市場を暗示しているようでもあり、寂しいかぎりだ。
追記:昨日(12/6)赤木屋の前を通ったところ、上の方に「証券」の看板があった。遠くから見ていなかっただけのようだ。しかし、1階からは「証券」の表示が消えている。
2012/11/28