ここで疑問がある。新しい自民党の政府が期待しているという日銀主導の金融政策は望ましい物価の上昇、つまりディマンド・プル型のインフレをもたらすのだろうか。
ゼニをジャブジャブ供給するだけで(ジャブジャブ供給するといっても、日銀が家々の玄関にゼニを配ってくれるわけでない)、国内の需要が盛り上がるのかどうかである。現在の大企業はあり余る手元流動性(現金や現金同等の資産)を持っている。しかしながら、それを積極的に使おうとしていない。個人はといえば、企業や政府によって賃金が絞られている。雇用も老後の年金も不安定である。だから積極的に消費しようとしていない。このように考えると、日銀の金融政策だけで需要が盛り上がる可能性は皆無に近い。
一縷の望みがあるとすれば、現在進行している株高や不動産価格の値上がりにより、羽振りの良くなった投資家や不動産関係者がハメを外すことだろう。
一方で、ゼニをジャブジャブ供給する手段として、結局は日銀が国債を大量に買い取ることになる。これにより、政府が大量の国債を発行しやすくなる。この結果は、今でも低い(少なくとも疑問符の付いている)日本国への信任を凋落させ、海外投資家による日本国債売り、円売りを招きかねない。こうなれば、ディマンド・プル型ではなくコスト・プッシュ型のインフレをもたらしかねないのである。
現在のデフレが望ましくなく、ノーマルなインフレが望ましいのは確かである。しかし、その手段として政府が日銀を脅し、金融政策に大きく軸足を傾けるのは非常に危険と思える。これに関連して言えば、87円台に突っ込んだ円安は何を意味しているのか。円売りの始まりでなければいいのだがと願うばかりである。
2013/01/02