大学を卒業したけれど就職できない。博士になったのに仕事がない。このような就職難の時代が長く続いている。就職難というより、学歴だけでは就職できない構造になったと考えるのが正しい。
このような構造変化が生じた理由は、1つは企業側にある。経済成長しなくなったから、新たな人員がいらない。むしろ、コスト削減のために減らしたいと思っている。このため、新卒に対する企業の門戸が狭くなる。また、利益を手っ取り早く上げるため、じっくりと人材を育成するというよりは即戦力を求める傾向が強まっている。というわけで、たとえ博士の学位があったとしても即戦力にはならないから、企業に採用されない。
もう1つの理由は教育現場にある。これまで、教育の現場と大学とは切り離されてきた。むしろ学生運動に象徴的なように、企業から身を遠ざけるのが正しい教育だと思われてきた。これでは、大学として企業が求めている人材を輩出できない。一部の領域を除き、実務において役に立たない教育や研究は自己満足でしかないのである。しかし、現在の大学の教員の多くは、大学の内部で純粋培養されてきているから、実務とは何なのかを正確に把握しているわけではない。だから教育にピンぼけが生じやすい。
最後は当然のことながら、学生自身に理由がある。卒業資格や学位を取得することを最大の目標として大学に入学する時代は終ったのである。大学を出て、では何ができるのか。それを自問自答しなければならない。単純に大学生活を楽しみ、ついでに多少の教養を身につけた程度では4年間はむなしい。そうであるのなら、専門学校にでも行き、もしくは職人の弟子入りをし、技能を身につける方が余程ましである。
親としても世間体だけで大学に進学させる時代は終った。進学し、卒業したとして、その後に何があるのか。それを真剣に考え、子供に正しい進路を示さないといけない。
難しい時代である。というか、高度成長期から1990年代中頃までにかけて、学歴以外に何もないのに、どこかに就職できた時代が特異だったと言える。そんな中で就職できた世代、特に団塊の世代は極めてラッキーだった。その端くれにいて、本当、ラッキー。
2013/01/16