川北英隆のブログ

国際収支に見る円安

2013年1月の経常収支は実額で3ヵ月連続の赤字となったが、季節的な変動を調整すると黒字だった。ただしその黒字額は小さく、昨年9月以降の「水面上ギリギリ」の状態が続いている。
財務省が季節調整した後の経常収支の数値では、9月は177億円の赤字、その後は1000?3000億程度の黒字が続いている。1月は3646億円の黒字だった。「黒字だから、日本全体として見て資金が海外から流入していることになり、良いではないか」との評価があるかもしれない。しかし、「海外の成長力を取り込むために海外子会社などへの積極投資が必要」な日本にとっては、その投資資金を稼ぐ必要があり、経常収支は黒字であることが求められる。この意味で、毎月、数千億円の黒字では物足りないのである。ちなみに、足元での対外直接投資(流入?流出)は毎月8000億円程度の流出超過である。3000億円程度の経常収支の黒字では、この海外直接投資を賄えない。
経常収支の内訳を見ると、貿易収支の赤字は季節調整をした後、6000億円台で推移している。輸出について、アメリカとASEAN向けが増加しており、底打ち感がある。このため、貿易収支の赤字は増加していない。一方、所得収支が漸減している。海外金利の低下が影響しているのだろう。また、1月の特殊要因として、ミャンマーに対する延滞債務(要するにデフォルト扱い)の1989億円を、ほとんど金利ゼロの円借款(金利0.01%、期間40年))に振り替えた。この関係で、経常移転収支に1585億円の受取りが計上された(デフォルトしていた資金が回収されとして扱い、日本の貸出に振り替えられたのだろう)。これがなかったとすれば、1月の経常収支(季節調整後)は2000億円台の黒字に縮小する。
以上、経常収支から見る限り、円は確実に海外に流れ出している。流出した(もしくは流出する)円の多くは外貨に交換される。つまり、現在の経常収支の状態は、円売り要因となっている。円安は安倍ちゃんの一言の影響だけではなく、経済的にも裏打ちされているわけだ。

2013/03/09


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