ネットによると、読売新聞と地方紙が「日銀が上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)などリスク性資産の買い増しを検討」と報じていた。もしも本当だとすれば、大きな疑問符が付く。
大胆な金融政策は、実質的に今以上に潤沢な資金の供給を意味する。現在でも市中に資金が溢れているのに、これ以上資金を供給してどうするのかとの疑問は残る。まあ「大胆」だから仕方ないとして、現時点においてさらに資金を供給するには、国債を買うのが本筋であり、一番妥当である。国債市場は大量の売買が可能な市場でもあるし。
では、ETFやREITを買う、つまり株式や不動産を買うことはどうなのか。日銀が株価や不動産価格に大きな影響を与えてしまう。これらの資産を価格を引き上げ(少なくとも下支えし)、消費や投資のムードを高めようとの意図を意味していよう。しかし、中央銀行として考えないといけないのは、株価や不動産価格が妥当な水準にあるのか、そうでないのかである。
現在の日本の株価はPER(株価収益率)で評価してアメリカ並にまで高まっている。企業利益から見て妥当な水準に戻ったのだろう(日本企業の活力がアメリカ並との前提に立った場合の議論)。不動産取引では、一部に加熱状態さえ観察される。その中、さらに日銀がETFやREITを買えば、これらの資産の価格が上方に行き過ぎかねない。日銀がバブル的状態を作りかねないのである。
株価の上昇も地価の上昇も、多くの日本人にとって好ましい。だから反対する意見は少ない。しかし、1980年代後半のバブル、2000年代中盤にサププライムローンが引き起こしたバブルを思い出しておこう。株価や地価を含む不動産価格の行き過ぎた上昇は、その後に長い塗炭の苦しみをもたらした。すべては程々が望ましい。
そんなバブルへのリスクを日銀が煽ることは到底容認できない。酒席で十分飲んだ者(民間)に、本来医者であるべき日銀が「もっと飲めや歌えや、一気飲みせえや」と勧める構図である。
このニュースを報じている大手紙は読売だけのようだ。ひょっとして単なる観測記事かもしれないし、「株価が下落に転じたら」との条件付きの検討かも知れない。まずは今後の日銀の議論に注目しておきたい。何がなんでも日銀が株式や不動産を買うのであれば、日本株のポジションを軽くすることも真剣に考えないといけないだろう。
2013/03/30