川北英隆のブログ

自然遺産を護る資金と気概

富士山を世界文化遺産に登録しようとの動きが活発化しているとか。今後、登録基準が厳しくなるので、その前の駆け込み申請との噂もある。それはともかく、遺産登録に質問しておきたい。
現在までの日本の世界遺産登録は観光目的でしかないのでは。世界遺産に登録し、それを護ろうとの本来的な意志はどの程度あるのだろう。本来的には入域料を課し、さらに入域者数を制限すべきではないのか。このことは以前から尾瀬や屋久島で検討されてきたが、今はどうなっているのか。
ネットで調べたかぎりでは入域料は実現していないようだ。検索して発見したのは、僕自信のブログだった。そんなものが10位までで引っかかるようではお先真っ暗。
浦安や大阪の商業的遊園地に入るのに高い料金を払う。寺院の参拝もそうだし、そこでは追加料金を払って宝物殿にも入る。それなのに、富士山はもちろん、尾瀬や屋久島に入るのに「お金が必要なの、ええっ」との議論がわき起こり、地元の関係者も「入域料を徴収すれば誰も来なくなるのでは」と心配する。こんな世の中は変だろう。
「自然だからタダ」ではない。自然を自然のままに残すには本来多額の資金が必要となる。たとえば、多くのレインジャーを雇用し、植物の盗掘を防止しないといけない。歩道の整備も当然必要である。遊園地や寺院よりも面積が圧倒的に広い分だけ、管理により多くの費用がかかる。
でも、「(国立公園)綺麗になってるじゃん」とか言う姉ちゃん、兄ちゃんがおるやろう(嘉門達夫風)。姉ちゃんや兄ちゃんがそう思うのなら、もうちょっと観察が必要だ。国立公園でも国定公園でもいい。東京から一番近い所では大菩薩だろうか。谷から山に取りつこうとすると、廃棄物が目立つ。車も複数捨てられている。そんなとんでもない事態を防ぐには車での入域に料金を課し、レインジャーを雇うことが最善だと思っている。
それができないのなら、どうなるのか。自然遺産に登録された瞬間に(富士山の場合は文化遺産だろうが)、遺産の崩壊が加速する。10年も経てば二目と見られない姿に変身していると思って間違いない。屋久島や白神が自然遺産に登録される前、文化事業に熱心だった某最大手生命会社の予算を使い、自然環境を調査するためにこれらの地域を調査した。その後、これらの地域に行くことがないのも、変わり果てた姿を見たくないからだ。
自然遺産、文化遺産からは本来、永遠の恩恵を受けないといけない。それを、新婚さんではないのに「誰でもいらっしゃい」と目先の観光に利用し、10年程度で普通の観光地に落ちぶれさせれば、地元を初めとする観光業者にとって大損害のはず。それなのに、である。こんな単純な計算ができないのかと落胆してしまう。
シミエン国立公園の話題で思い出した次第。
追記:その後の新聞(4/9)によると富士山に関して山梨県と静岡県は入山料を取る方向だという。いいことである。ぜひ実現させてほしいものだ。

2013/03/31


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