今はあまり注目されていないというか記事にならないのが、海外からの日本国債への投資である。毎年1回、改定しているテキストの書き換えのため、投資家別の債券保有額を調べた。すると・・・
2011年末から2012年末にかけての1年間の国債保有額の増減を計算した。データは日銀の「資金循環統計」である。
そうすると、海外投資家による広い意味での国債保有額は5.6兆円増えていた。2012年末の保有総額が83.0兆円だから、まあまあの増加である。しかし、その増加は国庫短期証券によるもので、これは21.6兆円の増加である。一方、狭義の国債は16.1兆円の減少となっている。
要するに、海外投資家はじっくりと日本国債を保有しようというわけではなく、外貨準備の一環として、ごく短期の保有を意図して日本政府が発行する債券を保有しているようだ。日本国を信頼し、長期投資目的で海外から資金が大量に流入しているような新聞の書きぶりが何回かあったが、どうも実態は異なっているようだ。逃げ足の速い資金ということになる。現在、急速に円安が進んでいるのも、「そうか」と理解できる。
ついでに計算すると、上記の1年間で国庫短期証券以外の国債の保有を増やしたのは、預金取扱機関26.0兆円、日本銀行23.3兆円、保険12.1兆円となっている。一方、年金、証券投資信託、金融機関以外の企業、家計は保有を減らしている。このうち、預金取扱機関の内訳は細かく知ることができる。まだ計算していないが、興味深そうなので、時間を見つけて調べたいと思う。
今後は黒田新総裁の指揮により日本銀行の国債保有が大幅に増加する。どうも国債保有の構造の歪さが目立つようになろうとしている。
2013/04/09