川北英隆のブログ

第三の人生をどうするか

先日、波多野聖(はたのしょう)氏に会った。現在、ハルキ文庫から「銭の戦争」を出している作家である。これまで3巻まで出ていて、完結すると10巻になるらしい。どんな内容か。
戦前の相場師の話である。ほぼ実話に基づいているとのこと。また、単純な相場師の話ではなく、当時の歴史的背景が舞台として描かれている。
戦前の相場師の話は面白い。実のところ、戦後の高度成長期までスケールの大きな相場師がたくさん登場した。彼らの話を集めた林どりあん著「相場に奇策なし」、改題して「歴史が教える相場の道理」は好きな本の1つである。残念ながら両方とも絶版になっているが、アマゾンで中古本が投げ売りされている。
「銭の戦争」もスケールの大きな相場師の話だから面白い。ただし、なまじかの教養があると、この本に散りばめられている、実は盛りだくさんの教養に圧倒され、くじけるかもしれないのでご用心を。聞いたところ、著者に一人の読者から感想があり、「東大卒だから理解できるが(普通では難しいだろう)」と述べられていたとか。つまり、東大卒以外は、僕も含めて理解できないことが多いそうだ。何たルチーア。
それはともあれ、波多野聖はペンネームで、本名は藤原敬之氏、著名なファンドマネジャーだった。その藤原氏が第二の人生として作家生活に入っている。自室に篭り、現役時代に大量に集めたCDを聞きながら(そのリズムでキーボードを叩きながらだと思う)、文章を書いているとか。
その話を聞いていて思ったのは、「これまでやってきたのと違うことをやるのが、人生の理想かな」と。僕自身、正確な評価かどうか自信はないものの、サラリーマンを経て大学教員になった。2つの人生を経験したわけだ。これから3年後に定年を迎えるが、その後の第三の人生は、できればこれまでと違った時間の過ごし方をしたいと思う。実のところ、若い世代には申し訳ないのだが、我々の世代は年金だけである程度納得の行く生活ができるのだから。
ということで、理想としてあるのは、家に戻らずワオワオと声を出して世界を歩きまわる雄のドラ猫かもしれない(雌のドラ猫なんていないやろ)。明かすと、ドラ猫説は家内が唱えている。もしくは家に閉じこもり、時には京都市内を散歩して、執筆活動をする姿もいいかと思う。いずれにせよ、65歳になっても今と変わらず、ゼニ儲けを1つの目的として働いているのはイメージの外だ。

2013/04/18


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