日銀が大量の資金を供給するため、国債のすべての年限を購入するという。その規模は国債新規発行額の約7割である。このため、国債金利の大幅低下が予想されたが、実際は金利上昇となった。
もちろん、その上昇規模は大きくない。とはいえ、日銀が大量の国債を買うにもかかわらず、国債金利が上昇する(国債価格が下落する)のは何故なのか。
技術的なことはいろいろと指摘されている。しかし、重要なのは、日銀が2%の物価上昇を目標としていることとの関係が重要である。
目標期間の2年後、2%の物価上昇が達成されている場合と、そうでない場合とが想定できる。2%の物価上昇が達成されている(もしくはその可能性が高まっている)場合、金利は上昇する。現実には、10年国債金利が「実質経済成長率+物価上昇率」を少し上回る水準になっていることと考えて大きな間違いはない。日本の実質経済成長率が1%程度だとすれば、10年国債金利が3%を上回る。
逆に、2%の物価上昇の達成が困難だと考えられた場合、上の観点からの金利上昇はない。とはいえ、日銀が大量の国債を購入し、日本国の財政を現実に支えたにもかかわらず、経済が回復しなかったとすれば、その影響は大きいだろう。日本国に対する世界的な信頼の失墜は目に見えている。当然、国内も同じである。これは少なくとも、日銀以外、新規発行国債の購入者が消滅するに等しい。この結果、日本国債の需給が崩れ、価格が急落、金利が急上昇する。
まとめれば、日銀が政策目標とする物価上昇率の達成如何にかかわらず、金利上昇の可能性が濃厚となってきた。このことを債券市場の関係者が内々に強く意識している。だから、黒田新総裁の下での新たな金融政策の公表にもかかわらず、金利は低下しない。
では、新たに金融機関に供給された資金はどこに向かうのか。次にこの点を考えてみたい。
2013/04/19