ゴールデンウィークを外し、出雲と石見銀山の近くに行った。温泉と山を楽しむためである。宿泊したのはもちろん温泉。石見銀山で採掘された銀の積出港だった温泉津(ゆのつ)に泊まった。
温泉津は昔から、国内は北前船、海外は朝鮮との貿易の良港として栄え、銀の最盛期には、その表玄関だったそうだ。そこで期待して山陰線を降りたのだが、無人駅だったので驚いた。
予約してあった旅館まで町営バスがある(140円とか)。タクシーもある。というものの、歩いても1キロ未満、地域の事情を知るには歩くのが一番だ。安いし、健康的だし。というわけで、昔の温泉街まで歩いた。10分程だった。
歩くと、かつての繁栄と現在の衰退とが分かる。衰退の方は一目瞭然、閉まっている家が多い。繁栄の方は、大きな寺院、造り酒屋、醤油屋、呉服屋などがある。民家の表札に「温泉川(ゆのかわ?)」というのも見つけた。それらは、かつては立派だっただろう建物の白壁がはげ落ちていたり、銅の樋が腐っていたり、看板があまり読めなくなっていたりする。港には造船所があるが、今は廃業したらしく、屋根に穴の空いた工場が残っている。
そんな街中を歩き、泊まったのは「もりもと旅館」だった。ネットで検索していたところ、JTBの仲介で引っかかった。
民宿風だったが、温泉の内風呂があった。実は温泉津に、源泉が3つある。駅前に1つと、温泉街に2つ。もりもと旅館は、その温泉街の薬師湯から湯を引いているとのこと。赤い浮遊物の多い湯で、40度よりも少し低く、長く入っていられる。そうそう、温泉街の本来の源泉、元湯はかなり湯の温度が高く、尋常の神経では足湯程度でしか入れないそうだ。
旅館の料理は、これは予想していたのだが、魚が良かった。近海の刺身(ホウボウ、カサゴの類)、ノドグロの煮付け、アサリの味噌汁が気にいった。
地方起こしだと思い、温泉津に出かけることをお勧めする。変に時代に迎合的なホテルより、余程いい。飯も美味い。それに、東京近辺に住んでいると分からない、日本の現状が理解できるはずだ。
2013/05/19