欧州の中央銀行がマイナス金利を採用するのではとの記事があった。日経によると、「中央銀行が民間金融機関からお金を預かる際に利息を与えるのではなく、手数料を取る」との議論である。
手数料を取るとは、預金から手数料を徴収することであり、実質的なマイナス金利を意味している。このマイナス金利の議論は最近の欧州で盛んなようだ。
理屈は次のようなものと思える。「中央銀行が必死に大量資金を供給しているのに、民間銀行がその資金を企業に貸し出そうとせず、そのまま中央銀行への預金として眠らせている」、「けしからん」、「銀行の努力を促す意味で制裁を課そう」、「制裁としてマイナスの金利というのは常識に反した変な方法だから、中央銀行への預金にも事務コストがかかることを理由に、手数料を取ればいい」と。
この実質マイナス金利が実現すれば、その時には欧州の中央銀行の能力も問われないといけない。というのも、中央銀行が儲けることを意図するのならマイナス金利は打ち出の小槌となるから。つまり、どんどん銀行に資金を供給し、中央銀行に預金せざるをえない状態に追い込めばいい。中央銀行が儲けることを意図していないのなら(当然、そうだろうが)、中央銀行の十分な能力と実行力に基づいた大量資金供給なのだと証明しないといけない。証明しないのなら、裁判に持ち込む銀行が出てきても不思議ではない。
少し別の言い方をするのなら、「中央銀行として、経済の潜在的な状況を正確に把握し、適正と思える資金供給量を本当に供給しているのか」が問われる。つまり、実質マイナス金利を課してはいるが、民間銀行の経営を圧迫するものではないとの証明である。
いずれにせよ、自分達の能力が問われかねない、そんなリスクを秘めた大胆な金融政策を議論せざるをえないほど、欧州の金融情勢は依然として危機的ということだろう。
2013/05/22