東京の猪瀬はんがトルコ事件の汚名挽回とばかりに奇策を提案したという。日本の競争力を回復するため、標準時を2時間早める案だ。世界の笑いもの、鼻つまみものになりかねない。
その案の効果は、ニューヨークと取引時間が連続するからとか。それなら、ニューヨークと標準時をほぼ合わせるため、12時間進める(というか日も合わすには「遅らせる」)ことも検討していいだろう。「昼と夜とが逆転して体調が狂う」という反論を猪瀬はんはできないだろう。というのも、2時間時計を進めただけで、冬なんかは暗いうちに起きて電車に乗らないといけない。それだけで体調が狂う。
それに労働強化になりかねない。夏なんか、まだ日が高いうちに定時の退社時間を迎える。さっさと帰れるだろうか。帰れたとしても暑すぎるかもしれない。涼しい会社にしばらく居たいだろう。迷惑な話だ。
迷惑といえば、日本全体の時計が進めば、他国の経済活動にも影響を与える。どういう影響があるのか全体像はよく分からないが、航空会社のタイムスケジュールを全面的に見直すことも必要だろうし、通信システムなどに影響は出ないのか。
2時間進めたいのなら、役所と証券取引所だけやればいい。そもそも、証券取引所が取引時間の前倒しをやれば済む話であり、それなら大歓迎だ。その程度の効果を得るために、全国民、全世界を巻き込もうとの提案である。本末転倒だろう。それに、連続して取引できるというそれだけの理由で、外人が日本での証券の売買を増やすのか。
いずれにせよ、時間を変更して競争力を高めようという発想が出てきたのは、安倍政権の第三の矢とかいう「日本の競争力強化」の案作りが手詰まりな証拠だろう。企業をはじめ、経済活動そのものの活力を高めるための案が不足しているから、苦し紛れに奇策を出さざるをえないのだと思う。そんな案を出すくらいなら、日本の通貨をドルにしてしまうとか、歴代のアメリカ大統領を国会の特別議員にするとか、全議員が英語で答弁するとか、そんな案でもいいと思うのだが。
2013/05/23