ぼちぼち株価下落に対するコメントを書いていいだろう。結論は、妥当な水準を模索した調整であり、正常な力が働いている。毎日、毎月、上がり続ける市場はない。そんな市場こそ異常だ。
チャートは信じてはいないし、あまり使わない。しかし、株価の位置と市場の心理を知るには、チャートは便利なグラフである。日経のネットがちゃんとしたチャート(株価の推移)を提供してくれている。このサービスを愛用している。ついでに書いておくと、公器でもあるはずの東証のサービスは日経にはるかに見劣りしている。
さて、このチャートで日経平均の月足を10年間(最大限)表示してみよう。
http://www.nikkei.com/markets/chart/#!/0101
そうすると、昨年8月以降、4月まで陽線(白抜きの線で、月初よりも月末の値段が高かったことを表示している)が続いている。5月も昨日(5/29)まで陽線である。今日の下げで陰線に転じた。明日次第であるが、昨年7月以来の陰線の可能性が高くなった。
「そら、えらいこっちゃ、困ったな」と思ったなら素人である。10年間のチャートでこれだけ陽線が続いた期間を探すと、2005年から6年にかけての9ヵ月連続の場面だけである。今回も4月までで9ヵ月連続、5月も陽線なら当時を上回る。良く言えば市場に熱気があった、冷静に言えば過熱である。調整があって当然である。
PER(株価/収益)がアメリカを追い抜いていることは書いたと思う。アメリカ企業以上に日本企業が買われているというのは正当なのか。これは評価の分かれるところだろうが、企業の活力の点ではアメリカ企業の勝ちである。ということで、この上げ相場ではアメリカ株投資を推奨してきた。
以前に書いたかどうかは忘れたが、10年程前から感じているのは、日本企業はかつての電炉メーカーと同じで、一夜長者一夜乞食(長者と乞食の順番は逆だったかも)である。つまり、浮き沈みが激しいから、株価の変動も激しい。まさに今回の日本株の上げがそれである。
もっとも、アメリカの経済回復が続けば、日本企業には緩やかながら順風が吹き続けるだろう。今まで飛ばしすぎた分だけ相場には疲れが見えるだろうが、波に浮かんでいれば前進する。アメリカ経済を観察し(というのも、日本企業には自律的な回復力が乏しいので)、それが前進しているかぎり、日本市場を悲観する必要はないだろう。
これは当てずっぽうに近いが(アメリカ経済とその余波次第だが)、これまでの上げのスピードからすると12000円程度までの調整があっても不思議ではない。とはいえ、10000円に戻ることは、現在のところ想定しなくてもいいと思っている。
2013/05/30