川北英隆のブログ

賃金は本当に上がるか

安倍ちゃんの政策に呼応し、日銀が目指す2%の物価上昇は、賃金上昇とセットでないと何の意味もない。物価の方は、円安の影響により、日経風の表現では「じわり」上昇している。では賃金は。
物価上昇が最終的な目標ではない。高度成長期のように、賃金が上昇し、「先行き、どれだけ豊かになるのだろうか」との希望を国民にもたらさないといけない。先日、日経の中堅記者(もはやベテランかな)と話していて驚いたのは、入社したのが90年代初だという。「記者になってインフレを知らないんや」と盛り上がってしまった。「インフレになったら賃金も上がるから、パラダイムシフトが生じるかも」と締めくくった。
野田さん(すぐに名前が出てこなかった)が解散宣言したのが昨年11月半ば。それを先取りするかのように、株価は8月から上昇している。それはいいとして、肝心の賃金はどうなのか。民主党の凋落および安倍ちゃん登場の効果が出ているのか。
昨日、今年1-3月期の法人企業統計が公表された。これを用いて賃金関係を分析したところ、次のような結果が得られた。
製造業には賃金上昇が見られない。人件費が対前年比で減少を続けている。大企業には多少改善の兆しがあるものの、それ未満の規模の企業では、賃金状態は厳しい。
非製造業には明るさの兆しが見られる。大企業はもちろん、中堅や中小企業も、人件費の減少が底を打ったように見える。安倍ちゃんの呼びかけに呼応し、スーパーが賃金の引き上げを実施した効果もしれない。とはいえ、依然として前年比マイナスであることに変わりない。今後、どこまで回復するのかが重要であり、現時点では結論が出せない。
一方、企業側からすると、リーマンショックによって高まった人件費負担は、依然として重い。利益が上昇し、人件費負担が軽くならないと、本格的な賃金上昇は実現しないだろう。
まとめれば、物価の上昇は始まりつつある。電気料金、食料品の値上げが実現した。来年度、消費税の値上げも控えている。これに賃金という収入の上昇が伴うのかどうか。これによって安倍ちゃんの人気度が決まる。現在のところ、賃金に関しては、先月からの株価動向と一緒で、まだまだ予断を許さない。人件費に関する非製造業の明るさは、あくまでも兆しでしかない。

2013/06/04


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