雑誌への原稿を書いた。「本来の株式投資のあり方」と題しておいた。テーマは、株主総会での議決権行使であり、イギリスのスチュワードシップコード(stewardship code)との対比である。
印刷されるのは1月程度後だろう。そこで、少しだけ筋書きを紹介しておく。
スチュワードシップコード(stewardship code)とは、資産運用を受託している機関投資家(年金ファンド、保険会社、投資信託等)の責務を意識した場合の行動指針である。イギリスの企業財務報告評議会(Financial Reporting Council)が作成している。その目的は、投資家として企業に対して影響を与えることで、運用委託者はもちろん、企業や経済全体の長期的な利益に資することにある。
ついでに書けば、イギリスはこういう指針作りが好きな国のように感じる。アメリカとは異なっている。身分社会の名残で、貴族や紳士が大衆に対して道徳を垂れるような感覚かもしれない。
それはともあれ、コードでは企業に対する働きかけとして、モニタリング、議決権行使、エンゲージメントが指摘されている。ある企業の株式に投資したのなら、その企業の状態を観察・分析し、議決権を行使し、場合によっては直接企業に働きかけることをイメージしているようだ。
この点、日本において議決権行使だけに注目が集まるのと大きな差がある。議決権行使を軽んじるわけではないが、それだけでは何の意味もない。ましてや、インデックス運用を用い、広く薄く株式を購入して、議決権行使にすべてを委ねるだけなら、投資先の企業から、「会社側の議案に反対票を投じられたとしても、どうせ大したことないな」と馬鹿にされてしまう。違った角度からインデックス運用を評価すると、「(運用委託手数料が)安かろう、悪かろう(運用委託者はもちろん、企業や経済全体の長期的な利益にならない)」と思える。
時には集中的に投資し、企業側の経営を良くするよう直談判するくらいの行動が求められる。村上ファンドやスティールパートナーズの大暴れが懐かしくなってしまう。それと同じ方法を踏襲せずとも、投資家として企業と仲良くやっていく方法がいくつもありうる。
アメリカは投資家も企業も工夫をこらし、切磋琢磨しているから、自然と企業が活性化する。イギリスは指針で示す。日本は、分散投資や議決権行使という原理原則だけを教条として後生大事に守り、実質に目をつぶっている。これではイスラム原理主義者を批判できないだろう。
2013/08/03