タイ経済の発展が著しい。1人当たりGDPは約4000ドルと韓国や産油国よりも低いものの、それらを除くとトップクラスである。失業率は1%未満、人口100人の自動車保有台数は約15台とやはり多い。
タイの環境上の特徴は、ベトナムに関して書いたのと基本は同じだ。水が多く、気温も高い。このため、農作物の生育に適している。さらに、ベトナムよりも圧倒的に平地が多い。だから、稲作はいつでも可能、年に3回収穫できる。庭でバナナやヤシが勝手に実るし、鶏や豚も勝手に大きくなる。庭の池では魚も飼える。虫もたくさんいて、食用にできる。
話は横に逸れるが、今回のタイ旅行で残った宿題は、売っている虫を食べることだ。実は、タガメを食べたいと思っている。
さて、そんなタイだから、そもそも真面目に働く必要がない。米を3回収穫しようとは誰も思わないらしい。そんなことをしたら、暑さで身体がやられてしまう。
ガイドの姉ちゃんも、「今日生きるカネさえあったらええ」と、江戸っ子みたいなことを言っていた。どこまで本気かどうかは不明だが、米を3回収穫するタイ人が稀有なことからすると、本音に近いのだろう。そうそう、姉ちゃんに「いつも、財布にどのくらいのカネを入れてるの」と質問したら、「1000バーツ(3000円)くらい」と答えた。タイの物価からすると、日本の1万円くらいに相当するか。食費からすると2-3万円かもしれない。
タイの経済は昔から豊かだったようだ。父親は何回かビルマの慰問に行ったが、「ラングーン(ヤンゴン)からバンコクに戻ると、物が揃っているのでホッとする」と言っていた。適当に働くだけで経済全体も発展する、夢の国だったのかもしれない。
しかしながら、真面目に働かなくても、適当に生活できることは、経済にとってマイナスの面も多々ある。
日本の農業は稲作の作業時期が集中する。このため、村ごとに計画的にかつ協力して働かないといけない。温帯では、植えた水田はほったらかしておいたのでは十分な収穫ができない。だから、真面目に働く必要がある。ここに、村社会的な、真面目な国民性の基盤があるように思う。
これに対してタイは個人主義というか、自由奔放である。一斉の農作業はないし、まじめに働く必要性にも乏しい。坊さんが托鉢に来れば、施すゆとりもある。これがタイの「ほほえみ」文化である。だから、経済も都市開発も、外目には緩く、計画性に乏しいように映る。タイ人を雇用しても日本人のように真面目に働かない。タイ人からすると日本人は会社の奴隷としか映らないだろうが。
どちらの社会がいいのか難しいところだが、「投資」という点では、以上がタイの物足りなさだろうし、いずれ中国本土の企業や華僑に経済が乗っ取られるリスクもあるように思える。また、自由奔放だから、政府の政策に不満があるとすぐにクーデターとなる。
ただし、タイをタイとして維持しているのが王制だろう。現在の国王に対する国民の信頼は厚いという。逆に、現在の国王が逝去した時に、タイの真価が問われる。これもタイへの投資のリスクだ。
2013/09/02