川北英隆のブログ

企業利益は回復しているが

今週の初めだったか、法人企業統計の4-6月の実績が公表された。それを分析したところ、大企業を中心に利益は急速に回復しているものの、人件費の回復にはまだ距離があるというものだった。
大企業(資本金10億円以上)について、最も重要な利益である営業利益段階での増益率(前年同期比)で見ると、製造業は+71.2%、非製造業は+27.6%だった。この増益が安倍ちゃんの登場以前からすすんでいることは以前に書いたと思う。また、増益率からすると、大企業の景況感は大きく改善しているはずだ。
とはいえ、手放しで喜べないのも現実である。問題は、次の3点に集約されるだろう。
1つは、営業利益の水準が依然として低いことである。大企業製造業の場合、6年前、すなわちサブプライムローン問題が表面化しつつあった2007年4-6月と比べ、66%の水準でしかない。大企業非製造業の場合、情報通信業やサービス業(サービス業の何が良かったのかは不明)の利益水準が高いことから、124%の水準にあるものの、業種間の跛行色が強い。
この点とほぼ同じことだが、気になるのは売上高の低迷が続いていることである。前年同期比で大企業製造業は-3.1%、大企業非製造業は+1.0%だった。
2つに、大企業はともかく、それ未満の企業規模では回復基調がまだまだなことである。大企業以外の製造業の営業利益は前年同期比で依然として減益(-5.1%)、非製造業はようやく水面上に顔を出した程度(+0.9%)に留まっている。全体として減益幅が縮小しており、回復基調にあるとは言えるものの、回復が実感となるにはもう少し時間が必要だろう。
3つに、大企業においても付加価値額(GDP統計に合わせ、「営業利益+人件費+減価償却費」で計ったトータルとしての日本経済の活動量)の回復が鈍いことである。前年同期比では、大企業製造業は+8.0%、大企業製造業は+7.0%にすぎない。大幅な営業利益段階での増益とは異なっている。見方を変えると、4-6月期の増益は人件費をはじめとする経費削減が続く中でのものだったと言える。
大企業としての今後の課題は、現在の回復基調を、部品などの供給先や下請けなどの川下企業にどの程度の速度と規模で波及させられるのかどうか、また近々人件費の引き上げをもたらしうるのかどうかだろう。
人件費に関して言えば、大企業の段階においても削減(前年同期比でのマイナス)が続いており、その削減幅の縮小も見られない。この点に関して、この人件費の削減が、団塊の世代のリタイアによるものなのか(そうであれば楽観視できる)、人員の削減なのか(海外拠点に日本人の従業員を送り込んでいるためであれば、これも楽観視できるが、多分そうではないだろう)、時間当たり賃金のカットなのか(そうであれば、国内需要が回復し、デフレが解消されるにはほど遠い)、十分な分析ができていない。とはいえ、国内で支払われる人件費が依然として縮小していることは、日本経済にとって重大な問題として認識できるだろう。

2013/09/04


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