川北英隆のブログ

東京電力の上場はお笑い未満

福島原発の事故の収束目処が立たない。汚染水問題が深刻化している。日本のものだけではない太平洋に、文字通り放射能を垂れ流しているからだ。問題の根源は、政府の対応の誤りだろう。
金銭的な責任をどうするのかの議論はあるだろうが、事故のあった福島原発は東京電力から切り離し、日本政府として直接処理すべきだった。そうなると、当然のこととして、既存の東京電力に対する出資(株式)はゼロクリア、すなわち100%減資にならざるをえず、上場廃止だった。
現状は、福島原発を東京電力のものとし続け、減資もせず、上場維持をしているから、問題を複雑化したのではないか。そもそも、放射能汚染水の垂れ流しが誰の責任なのか、不明瞭化している。これが汚染水の事態を悪化させている最大の原因だろう。
現在の体制では一義的には東京電力の責任なのだろうが、政府に責任が皆無とは誰も考えていない。そもそも原子力行政を推進し、電力業界とつるんで来たのが政府である。電力行政だけでなく、景気対策としての公共工事に関して、電力業界に設備投資増額指示が出されたものだ。自民党政権の時代の話である。
だから、原子力事故が発生したからといって、掌を返したように、全責任を東京電力に押しつけることはできない。この連帯責任を明確にする意味で、福島原発を政府直轄にすることが最善だった。そうすれば、東京電力としての予算や収益の制約が軽くなり、初期段階で汚染水問題に対する抜本的処置が可能だったはずだ。
加えて、大衆というか多数の株主に迎合し、上場廃止されなかったため、東京電力に変な上場維持のための収益目標が生まれてしまった。このため、「採算」を意識した汚染水対策になってしまったのではないか。これでは事故対策として、虻蜂取らずである。
現在の東京電力株は、値動きの点では魅力的かもしれないが、投資対象として何の価値もない。言い換えれば、東証公認の賭場として意味があるものの、本来の投資としては無価値か、むしろ邪魔である。
昨日、某大手投資家と意見交換したところ、東京電力は「いつ復配するかまったく見えない」、「利益が計上できたところで、それはすべて賠償請求されるに決まっている」との結論に達した。
以前にも同じ議論をこのブログに書いたが、この東京電力が株価指数としてのTOPIXの計算に入り、そのTOPIXをそっくり真似るために東京電力をポートフォリオに組み入れている大手投資家がいるなんて(多くの年金がそうだが)、「アン信じラブル」だ。時価総額8000億円以上の株だから、東京電力をポートフォリオに組み入れないと、株価指数を真似できないのだから。客観的に評価すれば、このTOPIXを真似ることは「悪しきを真似る」ことに等しい。個人として、国民として、将来の年金の受給権が価値破壊されているわけだ。
この日本国の責任逃れ、形式主義、何とかしないと世界の笑いもの、鼻つまみものだろう。

2013/09/06


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