川北英隆のブログ

貿易統計2013年9月

9月の貿易統計の輸入超過額は予想外に大きかったのではないだろうか。証券会社の速報レポートを見ていると、輸出が予想ほど伸びなかったようだ。この背景に何があるのか。
9月の輸入超過額は、実額で9321億円、季節的な変動を調整した額で10913億円だった。9月は季節的に輸出の大きくなる月なので、実額としての輸入超過額が最高値になることはなかったが、季節調整値で東日本大震災以降の最高額(おそらく史上最高額)に達した。今年の春先を境に輸入超過幅が減るか、少なくとも頭打ちに見えていたものの、ここに来て、その見方が甘かったように思える。その理由を少し考えてみたい。
輸出に関して。円安によって円ベースでの価格(手取り単価)が上昇している。その率は約14%、依然として価格上昇が続いているようである。とはいえ、その上昇率は円安の率よりも小さい。一方、輸出量の増加はあまり目立たない。昨年末から今年年初を底に数%増えているかなという程度である。要するに、輸出額の増加は円安効果が大部分であり、企業の生産量には貢献していないことになる。「ヨーロッパの景気が、中国の景気が」と理由を付けているものの、アメリカ向けでさえ、輸出量の増え方は微々たるものに止まっている。日本の輸出力に陰りが出ていないのか、海外法人での生産活動がどうなっているのか、検証すべきだろう。
輸入に関して。円安が円ベースでの輸入価格の上昇をもたらすのは輸出と同様である。しかもドル建ての輸入が多いのか、その率は17%程度と、輸出よりも円安効果が強く表れているようだ。一方、輸入量の目立った減少もない。品目別の分析を行っていないので、それは今後の宿題としておきたいが、燃料輸入に象徴される「輸入せざるをえないもの」があるとともに、スマホのように日本の製品競争力や海外現地法人からの輸入の分析も必要となってきている。

2013/10/21


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