経験豊かな看護師と話す機会があった。病院勤務を離れ、訪問看護に従事している看護師との面談である。医療のことを研究しているわけでないから、知らない世界であり、非常に興味深かった。
理由は不明だが、知り合いとの関係では、病院との関係を有している教員が何人かいる。僕自身も、ヘルスケアリートに象徴されるように、病院や介護関係のことが断続的に降ってくる。今回も、看護・介護に関する研究の誘いだった。学生の紹介というか、学生の関心で看護・介護の研究を手伝うことになりそうである。そのプレディスカッションのため、訪問看護を専門としている複数の看護師の話しを聞いた。
その詳細はこれからの分析である。興味深かったことを思い出すままに書いておくと、初めて知ったのは、ターミナルケアすなわち末期の看護を専門とする仕事である。都会では、人生の最後をどう過ごすのか、いろんな選択肢があるとのこと。地方都市との大きな差を感じた。その仕事に専門性を発揮し、生きがいを感じる看護師がいることにも新鮮さがあった。
一方で、京都や大阪は行政の力が強く、看護専門の事業を立ち上げる難易度が高いとか。経済学的には参入障壁が高い。誰かの独占的な利益を守ろうとしているのかもしれない。この点は今後の研究対象である。
話しを聞いていると、看護師の能力の高さも知ることができる。これは僕も経験的に感じていることだが、高齢の町医者と若手の医者を信じてはいけないと看護師が話していた。前者は新たな医的知見に追いついていない。後者は経験が不足している。このため、看護師が「ええっ、違うのでは」と思う場面が何回もあるとのこと。レントゲンの見損じを看護師が指摘する事例(これは僕も経験した)、必要な措置を取らない事例(ガラスを踏んだ怪我に対してレントゲンを撮らずに足の裏に破片を残したまま縫合した事例)、手を一切触れずに(脈や瞳孔検査をせずに)看護師の検査だけで死亡宣告した事例などが話題に上った。最後に、医師の免許について分野を限定すべきではとも。
いずれにしても、入院した場合、担当医師の所見だけではなく、いつも来てくれる看護師の「セカンドオピニオン」を聞くのが必須のように思った。看護師が「症状からしてまだ早いのでは」と思ったのに、医師が「退院していいよ」と言ったので退院したら、すぐに病院に戻らないといけなくなった事例もあるそうなので。若い医者よりも、中堅の看護師の方が経験豊か、信頼できるというわけだ(これも僕の経験と合致している)。
2013/10/12