貿易統計が水曜日だかに発表された。しばらく忙しかったため、その分析結果を書けなかった。もっとも数字だけはチェックしており、結論として気になったことがあった。それは輸出動向である。
貿易統計の「輸出?輸入」金額は、季節要因を除去した後で10725億円の赤字だった。季節調整後の赤字額として、先月に次いで過去第2位の大きさである。調査機関の予測に反して、輸入超過額が減るどころか、増えているとの印象さえある。
貿易統計のように変動の大きな、かつ構造的な変化のありそうな統計の場合、季節調整という機械的な数値の処理が誤ってしまう可能性があるので、参考のために3ヶ月の平均値を計算している。その計算によると、10月の輸入超過額は過去最高となった。やはり、赤字が増えているとみるべきかもしれない。
調査機関が輸入超過額の減少を予測していた背景には、円安による輸出品の競争力の回復があった。その予想が当たっているのかどうか。
この点を確認すると、どうも円安効果が見られない。輸出数量を見ると、アメリカ向けは増えているように見えるし、EU向けも最悪期を脱したようだ。しかし、これらは欧米の景気を反映しているだけの可能性がある。一方で、アジア向けは芳しくない。これも景気を反映しているのかもしれないが、いずれにしても全体として、円安の効果は確認できない。これに対し、輸入数量はどちらかというと堅調である。
思うに、部品メーカーを含めた製造業の海外展開が進み、日本からの輸出が増えない構造が作られつつあるのかもしれない。このため、日本の景気が良くなると輸入だけが増え、その結果として輸入超過額が増えるという、昭和30年代の日本経済の状態に戻りつつある可能性である。
この点は経済学的にも興味深いし、証券投資の対象をどうするのかの選択に大きな影響を与える。注視すべきテーマである。
2013/11/22