アメリカ株が史上最高値を更新してきた。一方、日本株は5月の高値も抜けないでいる。新聞の紙面、ネット面は、日本企業の業績に関して明るいニュースのオンパレードなのに、どうなっているのか。
少し前、世界各国の株価指標をダウンロードしておいた(10/25ベース、Fact Setから)。これによって主要国のPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回りを比較しておきたい。以下、日本、アメリカ、ドイツの順である。
PER(倍):14.0 16.0 12.6
PBR(倍):1.26 2.66 1.78
配当利回り(%):1.85 1.79 2.74
この比較からわかるように、まず、日本のPERは相対的に低くない。アメリカより低いものの、ドイツよりも高い。各国が置かれた経済状況といえば、アメリカ経済がじっくりと回復していて金融緩和の出口に一番近く、方やドイツはヨーロッパ経済の混乱もしくは停滞の渦中にあり、日本は経済の混乱の中にはないものの自律的な回復に乏しい。以上からするとPERの順番は市場の評価どおりと考えて間違いない。
次にPBRは企業が事業に投下した資本の効率性から影響を受ける。詳細はここでは述べないが(弊著『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』を見てほしい)、アメリカの効率性が高く、日本が低いことを示しているだけと考えたい。この意味で、PBRからは、日本の株価が安値にあるとは言えない。
配当はどうか。かつての日本のバブル期のように、株価上昇を熱狂的に期待しているのならともかく、現在の株式投資にとって配当による収益は重要である。上の比較では日本とアメリカがほぼ同水準にあり、ドイツが高い。PERと配当利回りから配当性向(利益のうち配当として株主に支払われる率)を計算すると、日本26%、アメリカ29%、ドイツ34%となる。日本の場合、投下資本の効率性がアメリカと比べて劣ることと、現時点で十二分な手元流動性を保有していることから、アメリカ並みの配当性向では低すぎる。ただし、ここでのPERは予想ベース、配当は実績ベースであるため、今期大幅な増益が期待される日本の配当性向が低く計算されてしまう。そうだとすれば、今期の日本は大幅な増配にならないといけないが、そうはならないだろうから、日本の配当利回りはやはり低すぎ、株価を抑制している可能性が高い。
以上から、日本の株価が安値圏に放置されているとは言えない。現在の株価にはそれなりの理由があるということだ。株価が相対的に上昇するには、現在予想されている以上の増益になるとか、配当性向を50%以上にする増配があるとか、いずれにしても投資家にサプライズを与えることが必要だろう。
2013/11/01