先週、2013年度中の国際収支(速報ベース)が明らかになった。経常収支がかろうじて黒字を維持したことが大々的に新聞に取り上げられた。それよりも注目したいのは、直接投資の大幅増である。
最初に経常収支を簡単に確認しておきたい。2013年度の経常収支は7899億円の黒字、07年度の24兆円の黒字と比べればほぼゼロと言える。
これは、貿易収支が10.9兆円の赤字だったことによる。赤字は3年連続である。貿易収支の内訳は、輸出が69.8兆円(前年度比+12.2%)に留まったのに対して、輸入は80.7兆円(同+19.6%)と大きく増加している。この貿易収支の赤字をある程度相殺したのが海外からの金利や配当の受取超過額(第一次所得収支)の黒字増大である。この年度の黒字額は16.7兆円(同+14.0%)である。今後について、貿易収支の赤字は簡単には縮小しないだろう。海外からの金利や配当の受取超過額がどの程度拡大するかが重要となる。
以上は普通の新聞のニュースの繰り返しである。
この普通のニュース以外に重要なのは、海外への直接投資が大幅に増大したことである。2013年度の直接投資は13.2兆円(同+35.1%)の流出超過に達している。詳細に見ると、年度では1兆円を越す流出超過の月が4回ある。企業が海外展開に積極的になっている証拠である。円安だけでは企業の海外活動は止まらなかったのだろう。業績が良くなり、また手元流動性も厚くなっていることから、むしろ積極性を増したのかもしれない。
経常収支がほぼゼロの中、企業が積極的に海外投資を行えば、国内において資金が不足する。しかし、幸いなことに昨年度は証券投資が20.5兆円の流入超過だった。株価の上昇が海外から国内への証券投資を支えた。
日本国内の資金需給の今後について、日本株の魅力度がカギとなりうる。株式つまり企業の魅力度が高まらないと、国内の資金が貿易と企業の直接投資によって海外に大きく流出し、円が基調的に下落することになる。貿易収支が大幅に黒字の過去と、それが基調として赤字になった現在とでは、外国為替レートに関する考え方を変更すべきである。
2014/05/18