農中信託銀行の寄付講義のブログ、第2回。今日の講義は野村総研の堀江さんだった。知る人ぞ知る、GPIFの現運用委員であり、『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』の共著者でもある。
まだブログに書いていない農中信託銀行の奥野さんと同様、厳選投資の本質が価値の見極めにあることを、投資家をグローバルに調査した結果に基づいて説明してもらった。学生にも(もちろん熱心な学生だが)、得るところがあったようだ。
そんな学生の1人が、「価値を評価できるためには、どうすればいいのか」を質問した。それがすぐに分かれば誰も苦労しないのだが、堀江さんは同じことを「価値を評価する能力が自分にあるとは思えないが」との前置きでやんわりと答え、次いで「価値と価格の差を明確に意識すること」と答えた(一言一句正しくメモしているとは思えないが)。その具体例として、「100万円以上の(価格の)時計をありがたがっていてはいけない」、「時間を知るだけだったら1000円の時計で十分(価値がある)」ことを指摘した。厳選投資家とは、そんな価値重視の投資家だという意味である。
そこまで卓越しているわけではないだろうが、奇縁で親しくなったO氏と20年前、キリマンジャロに行った時のことを思い出した。当時のO氏は外資系の高給取りだった。ニューヨークに出張に行き、すぐさまケニアに出発するという彼と成田で待ち合わせした。空港で出会った瞬間、お互いに「ええっ」と言った。というのもまったく同じベストを着ていたからである。ポケットが多くて便利で、2000円くらいと安かったから、キリマンジャロ行きに新調したまでなのだが(という程のものかいな)。買った店は全く違う。ということで、男同士、怪しいペアルックで2週間近く仲良く旅行したわけだ。
オプションのブラック・ショールズ式で有名なブラックは、ゴールドマンサックスに所属しているとき、飛行機での出張はいつもエコノミークラスを使っていたという。飛行機が事故の時、生き残る確率を考えると、(規定上、彼が当然乗れる)ファーストよりもエコノミーの方が高いというのが、その理由だったらしい(O氏がブラックと一緒に仕事をしていた時、本人がそう語っていたという)。
そういえば、カシオのぼろ時計をゼムピン修理するのも、その類か。まあ、そんなことをしたからといって、厳選投資家の端くれに入れるわけではなく、その必要条件だけを満たしているにすぎないのだが。
2014/05/22