3月だったか、土曜日に東京でパネル的な講演をした。相手はプロ投資家の卵というか投資に興味を持つサラリーマン。その席で金融評論家の角川総一氏が「日経新聞に頼るな、疑え」と喋っていた。
親しい記者が何人もいる日経新聞、それだけにもっと「正しい記事」を書いてもらいたいと思っている。角川氏も言っていたが、とくに酷いのは見出しである。記事をちゃんと読むと、正しく書いてあることが多いものの、見出しは誤解チック極まりない。気づいた事例を2つ挙げておきたい。
1つは、今日の朝刊トップにあるボーナスの記事である。「夏のボーナス5.9%増」、「6年ぶり80万円台」、「鉄鋼・車 高い伸び」とある。しかし、記事を読むと、製造業は10.86%増である一方、非製造業は3.37%減である。とくに電力が37.97%減となっている。この電力の状況は記事をじっくり読まないかぎり見逃すだろう。
もう1つは、5/17の証券面にあった決算集計データと記事である。その後、日経は「上場企業の決算が絶好調」だと持ち上げる記事を連発している。しかし、5/17の集計表をよく見ると奇妙なことに気づく。それは、主要業種である電力が完全に消されている事実である。原発事故以降、特殊産業と化したのだろうか。そうだとすれば差別そのものでしかない。
通常、金融業を除いた集計や分析はよく行われるし、僕自身も行う。それは、財務諸表が通常の業種と異なるから一緒に分析するのが難しいとの理由による。日経の集計表も金融を除いたものをメインに据えているものの、金融を含めた集計値も載せている。それなのに、電力業はどこに消えたのか。
以前から書いているように、円安はメリットもあるがデメリットもある。とくに輸入超過の日本にとってデメリットは大きい。そのデメリットの相当部分を引き受けているのが電力業である。上のボーナスの減少も、この影響がかなりある。
電力業を除いて業績が絶好調というのはあまりにも短絡的、むしろ国民のイメージを臭いものから離れさせるための誘導か。家計の主婦はあまり日経を読まないから黙っているのだろうが、読んだとしたら、「電力代やガス代の大幅値上がりをどないしてくれるんや、何とか書けや」と文句を言うに違いない。
2014/05/25