今日、日本電産の永守社長に大学生向け講義をお願いした。5/15のブログに書いたように、京都企業シリーズの2社目である。講義は挑発的であり、慢談風であり、かつ示唆に富んでいた。
印象に残った言葉をいくつか紹介しておく。
経営者はホラを吹き、それを夢に変え、最後に実現する。ホラとは大志の意である。
日本企業は(ベンチャー企業に対して)経営者の年齢、従業員数、資本金を質問するが、アメリカ企業は製品そのものを質問する。永守社長の経験談である。これこそアメリカ企業の凄さだろう。
企業理念は、「企業の最大の社会貢献は雇用の創出」、「世の中で、なくてはならない製品を供給する」、「一番にこだわり世界トップを目指す」。二番ではドベと同じだとも。鉄鋼や自動車業界の1社が潰れても同業他社がすぐに補うが、日本電産の場合はそうかいかないとの意である。モーターでシェア70%以上のものがいくつもあることが、この日本電産の意図を象徴している。また、目線はいきなり日本を超え、世界にあるとも言える。
企業精神は、「情熱、熱意、執念」、「知的ハードワーキング」、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」。「出来ない」とは言うなとも。
100年企業から学んだことは、「世界の変化に合わせ、恐れることなく先んじて事業ポートフォリオを変え続ける」、「好不況にかかわらず研究開発投資を怠らない」、「好不況にかかわらず頑張る人材を大切にし、育成する」。人員整理をしない、その代わりに働かせるとの含意があり、日本電産も実践してきている。
円高局面を利用して海外でM&Aを実行してきた。農中信託のコメントでは、業績の悪化を円高やリーマンショックのせいにしないとも。
世界の電力需要の半分以上をモーターが消費しているから、そのモーターを省エネ化するだけで効果は絶大。原発のネックなんてないとの意味も込められている。
グローバル人材とは、英語力は運転免許、これに加え、突破力と雑談力が必要。ユーモアある雑談で人の心をつかむことだそうだ。
100年企業を目指し、日本電産の経営者予備軍を輩出するため、グローバル経営大学校を作ろうとしている。また、モーター専門の基礎技術研究所を今年1月に開所した。
日本電産のM&Aはイチロー方式、つまり多くのヒットを狙っている。ホームランは狙わない。
同業他社は買うか潰すかすることで、日本電産のシェアを高める。まさに戦国時代の天下取りである。
良い企業はきれい(整理整頓、掃除、人の教育が行き届いている)。見れば分かる。
以上の講義の後、時間をいただき、時計台のレストランで食事をした。永守社長の紹介者の一人であるグッドバンカーの筑紫社長が、「永守社長は誰かの意見を聞くか」と質問したところ、「(今は亡き)母親と、家内」とのことだった。とくに奥さんは、「世界一の経営者になるというので結婚したのだから、それを実現するように」と意見するそうだ。「どこそこに(旅行に)連れて行け」とは言わないとも。ひと纏めにして感想を書いておくと、この親にしてこの子あり、この夫にしてこの妻ありか。
思うに、まだ未婚の男性はプロポーズする時に大きなホラを吹くべきだろう。女性も、そういうホラ吹き男性を探すべきだ。そうすると、男としては結婚した後、吹いたホラを実現するため、努力への第一歩を踏み出さないといけないから。男女均等の精神からすると、女性がホラを吹いて男性をゲットしても、まったく問題ないが。
2014/05/29