川北英隆のブログ

残業制度と働き方の見直し

残業制度の適用のない働き方を拡大しようとの法案が検討されている。基本的には残業を想定しない働き方に賛成である。しかし、理想と現実のギャップを考えると、法案は理想論に走りすぎだろう。
要するに、要求された、言い換えれば給与水準に見合った仕事さえできていれば、どのように働こうが自由、これが理想である。自分自身の将来を考えた場合、給与水準を少し上回る仕事をして、翌年の給与アップを狙うのが正しい。昔、棒高跳びにブブカという選手がいた。彼は世界記録を少しずつ更新することで有名だった。一気に、力一杯更新すれば収入面、人気面で不利だからである。サラリーマンの現実的目標を示してくれたと、高く評価している。
問題は、働き方が自由に選択できるのかにある。そこで問おう。要求された仕事ができているからといって、通勤ラッシュを避けた10時出社が認められるのか。また、上司が残っているのに、「お先に」と挨拶してさっさと帰れるのか。「猫が病気なので、その世話のために今日は休みます」と電話連絡して休めるのか。有給を自由に取れるのか。「昨日、仕事しすぎたので寝不足です」との理由でいつでも昼寝できるのか。「そんなの、他の社員の手前もあり認められない」と言うのであれば、その企業は今まで通りの残業制度を続けるべきである。
実は、僕の働き方は、課長相当職になって以降、上記の昼寝以外は実行した。昼寝も昼休みには時たましていたし、パソコンを叩きながら、まぶたが閉じ閉じのこともあった。課長相当職だから当然残業は付かない。そこで、極端に秩序を乱さないかぎり、給与水準などによって課された仕事を120%以上こなしているのなら、好きな方法で仕事をすればいいと割り切っていた。よくできた職場だったので、そんなやり方でも認めてもらったのだろうと、一方で大変感謝している。
法律をいくら変えたところで、それは文字列の変更でしかない。企業文化を変えないことには、現実は理想に近づかない。産業界は残業制度の見直しに積極的らしいが、果たして従順な社員を重宝する企業文化を変えようとの意識があるのだろうか。単純に人件費を削減したいだけではないのか。
この点を強く問わないままでの法文改訂には、「山の日」と同様、賛成できない。

2014/05/30


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