川北英隆のブログ

有用な情報を得る術は情報

昨日の能見さんの講義でもう1つ、「その通り」と思ったのは情報に関するコメントである。「情報発信するところに情報は集まる」と書かれている。いろいろ解釈できるが、要するに情報は無料でない。
今はそうではないが、昔は記者が勤務先によく来た。懇意にしている記者もいた。もちろん相手は記者だから何らかの情報を得ようとしている。こちらは記者のために仕事をしているわけでない。記事に名前が登場したからといって謝礼が払われるわけでもない。記事になって名誉かと言われても、ほとんどの場合は「そんなのねえ」の程度である。
では何のために記者と会っているのかというと、こちらとしても相手から情報を得るためである。記者の主要な用件は20分かそこらで終わる。でも彼らは、大よそ1時間は取材を続ける。次のスケジュールがその程度の刻みで入っているのだろう。また、少し早く終わったからといって、会社に戻るには中途半端である。そうであるのなら、訪問の主旨とは少し異なるかもしれないが、周辺の情報交換をするのが得策となる。こちらとしても、いろんな先から情報を収集している彼らと喋って損はない。1つでも「そうなんや」という情報を聞き出せれば、1時間の価値相当のものが得られる。
ということで、取材の申し入れがあればほぼ受け入れていた。こちらが(言ってはならないことを除いて)良い情報を提供すれば、記者からの取材が増え、相手からも情報をもらえる。だから参考となる。これが世の中というものだろう。
逆に、取材だけしてさっさと帰る記者とは次に会う気になれなかった。また、通信社系のテレビ出演の依頼もあったが、多くは出演料を支払ってもらえるわけでもなし、記者と喋るのと違って情報をもらえるわけでもなし、1、2回でまったく出る気がしなくなった。バカにしているというわけだ。
以上が真実である。お互い貴重な時間を使っていることを直視しないといけない。その時間に見合う価値あるものを提供するのが常識だろう。この点、『日本型株式市場の構造変化』を書く上で、何回も議論をさせてもらい、最後に昭和40年に勃発した山一証券に関する関係者のインタビュー録音テープを提供してもらった(今はなき)公社債新聞社の記者N氏には非常に感謝している。

2014/06/06


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