研究室で作業していると時々電話があるものだ。研究室にいる時間が多くないから(大学周辺の昼飯が今一なことと、大学に出かける日は講義に時間をとられるから)、知ってる者は携帯に架けてくる。
今日も、その時々の研究室の電話が鳴った。採点をしているとこだったので、「また不動産やかいな」と思って受話器を取ると、老人の声で「名誉教授をしている高寺・・」とのこと。ここでピンと来ないとピンと来るところがない(最近、どっかで使ったセリフ)。会計学の高寺貞男名誉教授である。僕が学部生だった頃、会計学を講義されていたから知っている。
それで、電話番号がどうして分かったのか、何の用事なのか、疑問を感じながら受話器の向こうの声を聞いた。
電話番号は、事務に、「何々名誉教授やけど、教えてや」と問い合わせれば答えてくれるに違いない。僕のこの手を使おうと思った次第である。
用事の方は、結論からではなく導入部分から始まったので、実のところ確信はないものの、公正価値会計の進展が危機なので、その点をよく認識して研究活動をやるようにとのことだったと思う。僕の研究分野は会計ではないが、会計基準の制定に関わっていたことと、証券投資が会計制度と密接不可分なことから、電話があったのだろう。元東大の斎藤静樹教授と高寺先生は今でも連絡している雰囲気であり、その斎藤先生と僕は最近までアナリスト協会や金融庁などで時々お会いしていたので、その関係からかも知れない。真相は不明だが。
その後少し、高寺先生と雑談した。といっても相手は、調べると1929年生まれ、現在85歳である。40数年前、僕が大学生の時、会計学を教えられていたのが事実。ということは当時40歳半ば前か・・。単位は取らなかったので、あいまいに「会計学を教えられていたのを知っている」と伝えておいた。雑談の中、高寺先生はイングランドとスコットランドの会計学者は対立している、それは「国」としての対立が根にあるのかもしれないと言われていた。雑談といっても、学問的な雰囲気が漂っている。イングランドとスコットランドの間には「国境」としての土塁がボーダーとして残っているとも。
10分くらいの電話だったと思うが、その聞いたことのある土塁を見たい(近々に国境としての価値が蘇るかもしれないが)と思うとともに、少し緊張した時間帯だった。
2014/07/02